| 制作費 | 49,800円 | (税込54,780円) |
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| 維持管理費 | 月額4,480円 | (税込4,928円) |
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まほろば文庫
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2026.02.15|経営・マネジメント
超新版ティッピング・ポイント
世の中を動かす「裏の三原則」
著者:マルコム・グラッドウェル
出版社:飛鳥新社
発売日:2025年6月5日
著者について
何世代にもわたって変わらなかったものが、あっという間に別の何かに変化する瞬間。つまり、“世の中の空気”が一気に変わる瞬間には、一体何が起こっているのだろうか。2005年には、第二次小泉内閣下で「クールビズ」が始まり、「ノーネクタイでも失礼じゃない」という常識が一気に広がった。2020年以降には新型コロナウイルスが蔓延したことで、リモートワークやキャッシュレス決済など新たなテクノロジーの導入が一気に進んだ。
小さな火種が一気に広がり、社会の流れが反転する臨界点。本書では、この瞬間のことを「ティッピング・ポイント」と呼ぶ。この“世の中の空気”の広がり方は、まるで伝染病がパンデミックを起こす過程に似ている。最初は少数の感染者しかいなかったのに、1人、2人と感染者が増えていき、ある臨界点を機に一気に感染者が急増する。
本書では、流行や世論が加速するメカニズムに着目し、その背景にある“裏の三原則”について解説している。マーケティングや広報に携わる方、組織変革を進める経営者の方、そして情報に流されずに世の中の動きを読み解きたい方に役立つ一冊だ。
“We continue to believe that the best way to make an AI system safe is by iteratively and gradually releasing it into the world." - Sam Altman
(私たちは、AIシステムを安全にする最善の方法は、それを反復的に、そして段階的に世界へ送り出すことだと、今も信じている。 - サム・アルトマン)
この言葉は、ChatGPTを開発したOpenAIの共同創業者兼CEOであるサム・アルトマンが、長文エッセイ「Reflections」(2025年1月6日公開)で記した一節です。
2022年11月のChatGPT公開は、生成AIが「一部の研究者・開発者の技術」から「誰もが触れる生活インフラ」へと相転移したティッピング・ポイントでした。約2か月後には月間アクティブユーザーが1億人を突破。既存のビジネス構造が一気に変わり、私生活から仕事まで、人々の行動様式に変化をもたらしました。
しかし、ティッピング・ポイントには必ず副作用が伴います。誤情報(ハルシネーション)や著作権の問題、機密漏えいなどのリスクも顕在化し、企業や教育現場は、生成AIといかに“共生”していくかという規範づくりを迫られました。
そしてOpenAIの創業以来の歴史とサムの言葉をたどっていくと、彼がティッピング・ポイントの可能性と危険性を理解したうえで、その到来の“タイミング”と“拡散のスピード”を、段階的な公開や提供形態によって調整してきたことが浮かび上がります。
OpenAIは2015年12月、非営利の人工知能研究会社として設立されました。そして2018年6月11日に初代GPT(GPT-1)を発表。当初は現在のChatGPTのような「会話AI」ではなく、研究用の“文章予測エンジン”に近い存在でした。今のように誰もが使えるわけではなく、ユーザーは一部の専門家や研究者に限定されていました。
そして2019年2月14日、OpenAIは初代GPTの後継モデル「GPT-2」を発表しました。同社が取ったのは、あえて“ティッピング・ポイントを超えない”ようにするための設計でした。
GPT-2は最大で約15億パラメータ規模のモデルでしたが、2019年2月の発表時に公開したのは、約1.24億パラメータのモデルにとどまりました。その後、5月に約3.55億、8月に約7.74億へと段階的に拡大し、最終的に11月に約15億パラメータのGPT-2を公開しました。このように段階的なリリースを行うことで、AI技術が社会に拡散する範囲を限定し、悪意あるユーザーによる悪用リスクを最小限に抑えようとしたのです。
そして2019年7月、MicrosoftはOpenAIに10億ドルを投資し、Azure上で大規模AIを動かすためのパートナーシップを締結しました。これによりOpenAIは、研究開発に必要な資本とインフラを一段と整えました。2022年11月30日、OpenAIは満を持してChatGPTを一般向けに公開し、わずか2か月で推定1億人規模のアクティブユーザーを抱えるまでに拡大したのでした。
このOpenAIの事例から学べるのは、ティッピング・ポイントを超えるタイミングの重要性です。本書では、ティッピング・ポイントの新たな三原則として「空気感」「ソーシャル・エンジニアリング」「スーパースプレッダー」の3つが挙げられています。
OpenAIがChatGPTを公開した2022年は、コロナ禍を経てデジタル化が加速し、人々の間に「デジタル技術を試し、活用する」という空気感が醸成されていました。また、2021年の暗号資産市場の急騰・急落を経て、マイニング需要がしぼみ、GPUの供給が相対的に緩んだ時期でもありました。その結果、同じくGPUを大量に用いるAI分野への投資が加速しやすい環境が整い、AIを活用しようとする空気感がいっそう強まったとも言えます。
そしてOpenAIは、2019年のGPT-2リリースでは段階的な公開によって社会への介入度合いを調整し、「広がり方」をコントロールしました。これは、環境設計によって行動を変える「ソーシャル・エンジニアリング」の実例と言えるでしょう。
さらに、Microsoftという巨大プラットフォームに加え、開発者コミュニティを巻き込むことで、第三の原則であるスーパースプレッダーを味方につけ、生成AIを一気に社会へ浸透させたのです。
ロイター社の直近(2026年2月)の報道では、ChatGPTは週8億人超が利用しているとされ、競合のGeminiも月間7.5億人規模に達している、と伝えられました。まだ課題は残されているにせよ、AIが社会の中に浸透したことに疑問を抱く方は少ないでしょう。
このOpenAIの事例が示すように「ティッピング・ポイントは設計されうる」。この事実は心に留めておく必要があると感じました。社会の急激な変化に飲み込まれないように、むしろそうした変化をチャンスに変えられるように、本書のティッピング・ポイントの“新たな三原則”を意識しながら、社会の変化を敏感に捉える姿勢が大切だと感じました。
社会的伝染病はひとにぎりの外れ値──並外れて大きな社会的役割を果たす人々──によって拡散する。ロサンゼルスの銀行強盗の大流行がまさにそうだった。数万人が出場する都市マラソンのような大衆参加型のイベントでは決してない。執拗に強盗を繰り返す、ごく少数の輩が引き起こした混乱だった。(P.33)
コミュニティにはそれぞれのストーリーがあり、そのストーリーは伝染する。「ストーリー(物語)」という言葉は適切ではないかもしれない。「空気感」のほうがぴったりだ。(中略)それは全住民に叩き込まれる明確な掟のようなものではない。空気感ははるか頭上で形成され、たいてい私たちはその存在にすら気づかない。私たちは日々、目の前のこと、身のまわりのことに心を奪われているので、空気感など気にもとめない。だが実は空気感はめっぽう強力なのだ。(P.66)
ティッピング・ポイントとは限界点だ。絶対に動かないと思われていたもの、何世代にもわたって変わらなかったものが、あっという間に別の何かに変化する瞬間である。(P.135)
「三人が正しい数字なのかと言われれば、正直わからない。でも集団内で異質なタイプの人が増えてくると、誰も違いに注目しなくなり、異質な人が目立たなくなる数というのがあることはわかっている」とカシディは言う。 一人は孤独だ。二人だと友情が生まれる。それが三人になると「チーム」になる。(P.150)
水が熱せられると水蒸気に変わるように、ある相(フェイズ)が別の相に変わることを「相転移」という。ティッピング・ポイントはこの転換点のことで、小さな変化の積み重ねがある瞬間、突然大きな変化を引き起こす。(P.365)

AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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