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2023.07.13|経営・マーケティング
『深は新なり』
これは、俳人高浜虚子の言葉。
ひとつの事を深く掘り下げていくと、次の新しい何かが見えてくるという意味です。
この言葉を愚直に貫き、今や世界に轟く繊維企業へと成長したのが「東レ」です。
東レは、1926年に「東洋レーヨン株式会社」として創立。以来、繊維技術の開発と革新を通じて高品質な製品を提供し続けてきました。独自の繊維技術は、レーヨン繊維から始まり、ナイロン繊維やポリエステル繊維などの合成繊維、そして炭素繊維へと展開。1990年には、この炭素繊維がBoeing航空機の尾翼向け構造材に採用されています。
「糸から航空機へ」
目覚ましい発展を遂げるこの繊維技術は、東レの誇るコアコンピタンスと言えるでしょう。
私は、このコアコンピタンスという概念こそが、今の中小企業に必要なものだと考えます。
企業の成長は一朝一夕に成就するものではありません。
コアコンピタンスを持ち合わせた企業だけが、経営環境の厳しさを乗り越え、強靭な成長を遂げることができるのです。
コアコンピタンスとは、「企業が他社に勝つための競争優位を生む核となる能力」のことを指します。1994年、アメリカのゲイリー・ハメルとC.K.プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』によって、広く知られることになった概念です。
コアコンピタンスには、企業が他社と差別化を図るための、独自の技術、知識、スキルなどが含まれます。まさに企業の生命線とも言える能力です。
ここでは、先程の東レの「炭素繊維」を例に挙げて解説します。
東レが炭素繊維の研究を開始したのは1961年。
炭素繊維は機械的特性に優れていましたが、繊維(糸、布)の状態では工業製品の用途に乏しいという問題を抱えていました。
多くの海外化学企業が炭素繊維の開発から撤退・縮小していくなか、東レは炭素繊維の可能性を信じ、研究と開発を積み重ねていきます。
そして、後のPAN系炭素繊維の製造に結び付く重要な新規化合物を発見。炭素繊維の本格的な生産に取り組み、工業化への成功を収めます。
炭素繊維の工業化に成功した東レは、釣り竿、ゴルフシャフトなどスポーツ用具へと展開。軽くて丈夫な炭素繊維は、多くの顧客から支持を受けることになり、キャッシュフローと技術に磨きをかけていきました。そして現在は、航空機の構造材として認められ、Boeing787型機など多くの航空機に炭素繊維が採用されています。
自社のコアコンピタンスを見抜き、長期的な目標を見据えて粘り強く取り組んだ東レ。
今や国内唯一の総合繊維メーカーになり、「航空機向け炭素繊維の世界シェアはNo.1」です。
発熱・保温・DRYを謳った高機能インナーといえば、ユニクロの「ヒートテック」を思い浮かべる方も多いでしょう。筆者の冬のマストアイテムのひとつでもあります。
じつはこのヒートテック、東レとユニクロの共同開発で生まれた商品です。この商品を紐解くことで、コアコンピタンスの条件が見えてくるでしょう。
コアコンピタンスを形成するには、以下3つの条件が必要と言われています。
それでは、ひとつずつ解説します。
コアコンピタンスは、顧客に利益をもたらす能力でなければなりません。
東レの持つ高性能な繊維技術は、顧客が求める「着心地」や「暖かさ」などの要求を満たし、ヒートテックの付加価値を高めました。
また、2003年に初登場したヒートテックはその後、「ストレッチ性の向上」「静電気防止」「形状記憶」など、さらなる進化を遂げ今日に至ります。顧客に利益を提供し続ける姿勢こそが、同社の競争力を向上させています。
自社の能力が、他社に模倣されにくいユニークな能力であることもコアコンピタンスの条件です。すでに業界内で当然のものとなっているスキルや、まだスキルが業界最高レベルに達していないものは、コアコンピタンスとは言えません。
レーヨン、アクリル、ポリエステル。ヒートテックの「発熱・保温・DRY」という効果は、これら3種の繊維がもたらす機能で得られます。 東レの持つ繊維技術が真価を発揮した結果と言えるでしょう。この技術が、独自の地位を確立し続けるための重要な力となっています。
コアコンピタンスは、新しい製品分野で同じ力をどう使うことができるかに焦点を当てた能力でなければなりません。
東レの繊維技術は「ヒートテック」を皮切りに、「ウルトラライトダウン」、「エアリズム」などの新商品を生み出します。そして衣料だけに留まらず、産業資材や航空機の部品など、多岐にわたる分野へ展開。このような多角化は、企業の事業リスクを分散させるだけでなく、新たなビジネスチャンスを創出します。
「深は新なり」
この言葉が、東レの繊維技術をコアコンピタンスにまで深化させているのでしょう。
それでは、自社のコアコンピタンスを見つけ、育てるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、5つのステップを紹介します。
企業がコアコンピタンスを明確に定義し、その定義が社内に浸透していることが基本です。
まずは自社の「コアコンピタンスに成りえる能力は何か?」、もし無ければ「コアコンピタンスとして高めていきたい能力は何か?」、これらを明確化しましょう。
明確になることで、経営陣や管理職が自社のコアコンピタンスを理解し、適切に管理できるようになります。
コアコンピタンスの獲得計画を立てる際には、以下の内容を整理しましょう。
これらを整理することで、新しいビジネスチャンスを見つけたり、既存のビジネスを強化したりするためのコアコンピタンスを築くことができます。
コアコンピタンスの構築は、長期的な視点を持つことが重要です。
長期的に継続し続けることで、企業全体が意志統一され、方針のバラツキを抑えられます。また、構築に時間を要するほど、模倣されにくい能力となり、より成功に近づくことができます。
自社のコアコンピタンスを構築したら、適材適所に配備しましょう。
いくら有能な社員が多くても、その技術が適切に配備されていなければ、能力を最大限に活用することはできません。
企業のコアコンピタンスは、経営陣の注意力が散漫になることで失われることがあります。
失われる原因は、資金不足や分権化、提携企業による奪取、または業績の悪い事業部の破棄など、さまざまです。
そのため、経営陣は常に警戒を怠らず、コアコンピタンスが弱まらないようにしなければなりません。
他社のコアコンピタンスについても見てみましょう。
ダイソンのコアコンピタンスは、「デジタルモーター」と「流体力学」です。
この2つを掛け合わせることで生まれた「サイクロン技術」。高速で回転する空気の遠心力を利用して、ダストと空気を分離するという革新的な技術です。そして、開発されたのが「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」。
この当時の掃除機と言えば、紙パックが目詰まりを起こし、すぐに吸引力の落ちる掃除機が主流でした。
この紙パック不要のダイソンの掃除機は、そんな顧客のニーズを見事に捉え、ダイソンの代名詞とも言うべき商品になります。
「お正月を写そう」でお馴染みの富士フイルム。元々は、カメラやフィルムの開発・製造を手掛けていました。
しかし、デジタルカメラやスマホの普及により需要が激減。同業他社が経営難に追い込まれるなかで、富士フイルムが掲げたコアコンピタンスは、「精密な技術力」と「コラーゲン」の2つでした。
富士フイルムは、フィルムの開発・製造で培った「マイクロレベルの精密技術」を活かし、スキンケア化粧品「アスタリフト」を開発します。ミクロン〜ナノレベルのコラーゲンを配合している同商品は、肌の奥まで浸透し潤いをキープ。顧客から高い評価を集めることに成功します。
コアコンピタンスとは企業の競争力の源泉であり、その構築と防御は経営戦略の中心的な役割を果たします。
今回紹介した東レの事例をはじめ、各企業のコアコンピタンスはその企業の個性と価値を反映しています。そして、企業が継続的な成功を達成するための鍵となるのです。
自社の中を深く見つめ、新たなビジネスチャンスを得るためのコアコンピタンスを育てていきましょう。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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