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ポーターの競争戦略はもう通用しない?ファイブフォース分析の隠された落とし穴とは

2023.10.01経営・マーケティング

『ドグマ(教義、常識、既存の理論)にとらわれるな。それは他人の考えた結果で生きていることなのだから。』−スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズのこの言葉は、ビジネスの世界においても非常に重要なメッセージを伝えています。長年にわたって確立されてきた理論や方法にとらわれてしまうことは、新しい視点やアイディア、ビジネスチャンスを見逃すリスクがあります。常識や既存の理論を参考のひとつとして活用することは大切ですが、それだけに依存することなく独自の考えを信じて新しい道を切り開く勇気が求められます。

ビジネスの世界は絶えず変化し続ける戦場のようなものです。新しい技術の登場、消費者の嗜好の変化、グローバルな経済の動向など、多くの要因が複雑に絡み合います。そんな複雑なビジネス環境の中で、企業が競争優位を築き、持続的な成長を遂げるためには、どのような戦略が必要なのでしょうか。

ポーターの競争戦略「ファイブフォース分析」は、この問いに答えるひとつの鍵といわれてきました。ファイブフォース分析は、企業が直面する競争の本質を明らかにし、持続的な競争優位を築く重要な戦略です。しかし、激化する近年の競争環境の中で、このファイブフォース分析の落とし穴が浮き彫りになってきました。本記事では、ファイブフォース分析の落とし穴を紐解きながら、現代の競争環境における有効性や、新しい時代に合わせたアプローチについて探っていきます。

ビジネスを生き抜くためのファイブフォース分析

ファイブフォース分析には、「競合」「新規参入」「代替品」「買い手」「売り手」の5つの要因があります。この5つの要因を深く分析することで、企業は市場の動向を予測し、適切な戦略を策定することができます。

顧客を奪い合う三つ巴「競合」「新規参入」「代替品」

ファイブフォースには、市場の顧客を奪い合う3つのフォース(圧力)があります。

まず、「競合」とは何か。これは、同じ市場で同じ顧客層をターゲットにしている他の企業やブランドを指します。競合は、市場シェアを奪い合うライバルとしての役割を果たし、価格や品質、サービスでの競争を生む要因となります。

次に、「新規参入」。新しい企業が市場に参入しようとすると、資本の必要性、技術ノウハウ、ブランドの認知度など、さまざまな要因が参入障壁になります。この障壁は、既存の企業が市場を独占することを助ける一方で、新しいイノベーションやサービスの導入を遅らせる可能性もあります。

そして、「代替品」。代替品は、同じニーズを満たす異なる商品やサービスを指します。例えば、自動車とカーシェアリング、ハンバーガーチェーンとコンビニなど代替品は従来のビジネスモデルを揺るがす力を持っています。

価格への圧力「売り手」と「買い手」

ビジネスの舞台裏で繰り広げられる「売り手」と「買い手」の戦い。この戦いの中心にあるのは価格です。

売り手と買い手の圧力は、価格を決定する主要な要因のひとつです。売り手が強ければ価格を高く設定されてしまい、逆に買い手が強ければ価格交渉で有利な立場を取られてしまいます。この圧力は、供給量、需要量、代替品の存在などによって変動します。

“守りの戦略”ファイブフォース分析の活用術

ここでは、守りの戦略といわれるファイブフォース分析の活用術をひとつずつ解説します。

「競合」との争いで生き残るには

競合との関係は常に敵対的である必要はありません。ただ闘うだけではなく、競合との関係を如何に戦略的に築くかが、企業の生き残りにつながります。例えば、共同プロジェクトや技術交流、市場共有など、競合との連携により、双方にとってのメリットを生むことが可能です。

「新規参入」の脅威を感じたら

新規参入者に対抗するには、独自の技術やサービスをさらに強化し、差別化を図ることです。新規参入者が市場に参入すると、価格競争が激化したり、技術革新が進むなど、市場の構造自体が変わることがあります。これは、既存の企業にとっては大きなリスクとなり得ます。

「代替品」の影がちらつくときは

代替品との競争を避けるためには、独自の価値提案や、顧客との強固な関係を築くことが重要です。代替品がもたらす影響は、おもに価格競争や市場シェアの低下です。代替品が低価格で提供される場合、顧客が代替品に流れる可能性が高まります。代替品が持つ新しい技術や機能を自社の商品に取り入れ、競争力を維持することも考慮しなければいけません。

「売り手」の圧力に立ち向かうには

売り手との交渉戦略は、双方の利益を最大化することを目指すべきです。例えば価格だけでなく、納期や品質、アフターサービスなど、多角的な視点から交渉を進めることで、良好な取引関係を築くことができます。また、売り手に依存するリスクを減少させるための方法として、売り手の多様化が考えられます。複数の売り手との関係を築くことで、ひとつの売り手に問題が生じた場合でも、ビジネスの継続性を保つことができます。

「買い手」の圧力に立ち向かうには

買い手の圧力に対抗するには、顧客との関係構築が不可欠です。信頼関係を築くことで、長期的な取引関係を保持し、安定したビジネスを展開できます。単に価格を下げるのではなく、商品やサービスの独自性、付加価値を強調し、顧客にとっての真の価値を提供することで、競争力を高めることができます。

ファイブフォース分析だけでは通用しない?求められる“攻めの競争行動”

ファイブフォース分析は、企業の競争環境を評価するための有効なフレームワークのひとつです。しかし、現代の変動するビジネス環境においては、これだけでは十分ではないことが指摘されています。なぜファイブフォース分析が通用しないと言われているのか、本章で詳しく解説します。

持続的な競争優位を持ち続けている企業は全体の2〜5%しかいない

『アメリカでは、持続的な競争優位を実現する企業は全体の2〜5%にすぎない』
この研究結果は、テューレーン大学のロバート・ウィギンズとテキサス大学オースティン校のティモシー・ルエフリが2000年初頭から半ばにかけて論文を発表しました。この一連の発表は、これまでの競争戦略論を覆す衝撃的なものでした。なぜならば、ファイブフォース分析が掲げる競争戦略論こそが「持続的な競争優位」を獲得するものとされているからです。

競争優位とは、他の競合と比較して、自社が持つ独自の強みや価値を指します。この競争優位は、自社が市場で成功を収めるための基盤となり、その重要性は計り知れません。

持続的な競争優位を維持している企業には次のような特徴があります。

  • 独自の技術や知識
  • 強固な顧客関係
  • 効果的なブランド戦略

上記のように、価値があり、希少であること。そして、他企業に模倣されにくく、他に代替するものがないという強みがあります。AppleのiPhoneなどが代表的なもののひとつといえるでしょう。

近年では、多くの企業が市場変化への適応不足や技術進化の取りこぼし、代替品の台頭などにより競争優位を失っています。競争優位を維持するためには、継続的なイノベーションや顧客との関係の深化、市場のトレンドの早期キャッチなどを考えていかなくてはいけません。

一時的な競争優位の連鎖が企業の価値を高める

持続的な競争優位は非常に希少です。したがって、それを追い求めるのではなく、一時的な競争優位の連鎖を生み出し、企業の価値を継続的に高める必要があります。

一時的な競争優位とは、企業が短期間だけ市場の優位性を得ている状態を指します。例えば、新製品のローンチや特定のプロモーションなど、期間限定で強みを発揮している状態です。

この一時的な競争優位が連鎖するメカニズムとは、ひとつの優位性が終わる前に、次の優位性を生み出すことで、継続的に市場での地位を保持することです。競合から常に一歩先を行くこととなり、市場でのリーダーシップを維持できます。この連鎖効果は、企業価値の向上に大きく貢献するでしょう。

実際の事例として、ファッションブランドの「ZARA」が挙げられます。ZARAは、高速な製品回転を実現し、常に新しいアイテムを店舗に展開。顧客に新鮮な驚きを提供しています。この一時的な競争優位の連鎖が、ブランドの強力な市場価値を支えています。

現代の激化する競争社会に必要なのは“攻めと守りの両立”

現代のビジネス界は、まさに「激化する競争社会」といえる状況です。その中で、企業が生き残るには“攻めと守りの両立”が必要です。

例えば、自社が攻めの競争行動ばかりをとった場合どうなるでしょうか。市場の重複度が高い競合企業がいた場合、おそらくだまってはいないでしょう。競合企業も負けじと攻めの競争行動を起こし、価格競争に陥る可能性があります。ゆえに、重複度が高い企業同士は、互いに積極的な競争行動がとりにくくなるのです。

そこで重要になるのが、ユニークなポジション取りをすることです。重複度の低いポジションを狙うことでライバル企業との競争を避けることができます。この考えの根幹にあるのがファイブフォース分析による守りの戦略です。ユニークなポジションを確立し、そこで攻めの競争行動を起こす。これらは一見対立する概念のように思えますが、じつは両方がバランスよく行われることで、企業は持続的な成長を達成できるのです。

ファイブフォースの実例を紹介

実際の企業を例に、ファイブフォース分析を紹介します。事例を通じて、ファイブフォースの各要素がビジネスシーンでどのように作用するのかを具体的に理解することができます。

実例1.【自動車業界】トヨタ自動車株式会社

自動車業界でのトヨタの位置付けは、高品質で信頼性の高い車を提供するグローバルリーダーです。その製品ラインナップは、エコカーから高級車まで幅広く、多様な顧客層をカバーしています。

ファイブフォース分析を適用すると、トヨタは競合他社との差別化、新規参入の障壁、供給業者との強固な関係、顧客への高いブランドロイヤルティなど、多くの競争優位点を持っています。しかし、代替品の脅威、特に自動運転やカーシェアリングなどの新しい移動手段も無視できない要因となっています。

他の自動車メーカーとの比較では、トヨタは持続的な研究開発投資や、グローバルな供給網の構築により、常に業界の先頭を走っています。しかし、テスラやVWなどの競合も独自の戦略で市場を切り開いており、トヨタもその動向を注視しながら、次なる一手を考えていることでしょう。

実例2.【飲食業界】株式会社ペッパーフードサービス

炭焼ステーキを立ち食いするスタイルで注目を集める「いきなり!ステーキ」。このブランドを運営するのがペッパーフードサービスです。飲食業界での位置付けは、手軽に本格的なステーキを楽しめるカジュアルダイニング。そして、価格と品質のバランスが取れたメニューが、幅広い層から支持を集めています。

ファイブフォース分析を適用すると、競合他社との差別化、供給業者との関係、顧客のブランドロイヤルティなど、多くの競争優位点を持っています。しかし、代替品の脅威、特に他の飲食チェーンやテイクアウトサービスとの競争は無視できない要因でしょう。

「いきなり!ステーキ」は店舗展開のスピードが早く、2013年のスタートからわずか6年後の2019年12月には490店舗を達成しました。しかし、そこがピークとなりその後は店舗数が減少。2023年4月には198店舗となっています。店舗減少の背景には、増えすぎた店舗による「希少性(ユニークポジション)の喪失」が考えられます。持続的な競争優位がいかに難しいかを痛感させる事例といえるかもしれません。

まとめ

ファイブフォース分析は、持続的な競争優位を獲得するためには不可欠なフレームワークです。しかし、近年の激化する競争環境では、持続的な競争優位は維持できません。競争優位を持続できる企業はわずか2〜5%しかないのです。

私たち中小企業が生き残るためには、ファイブフォース分析を盲目的に行ってはいけません。重要なのは、守りの戦略であるユニークなポジション取りを行い、そして、積極的な競争行動により攻めることであると私は考えます。本記事が、ファイブフォース分析の重要性とその活用方法についての一助になれば幸いです。

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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