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Googleが重視する『EQ経営』 – 現代イノベーションの背景に「心の知能指数」あり

2024.10.23経営・マーケティング

「感情を適切に理解し、表現・活用する能力」として知られるEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情知性)。従来のビジネスでは長年にわたりIQ(Intelligence Quotient:知能指数)が重視されてきましたが、近年、組織が成功するためには高いEQが不可欠だという認識が広がっています。

EQを重視した経営を行う企業の代表例が、世界最大級のテクノロジー企業Googleです。同社は大規模な社内研究を通して、イノベーションを生み出す源泉がEQにあることを見出しました。そして、同社の取組みは、テクノロジーとEQを融合させることが、これからのビジネス成長の重要な鍵を握るということを、私たちに教えてくれます。

Googleの変革の裏にあった「EQ」の概念

「Don't be evil(邪悪になるな)」
この言葉は、Googleのモットーとして長年掲げられてきました。しかし2015年にGoogleがコングロマリット企業Alphabetとして再編された際、Alphabetのモットーは「Do the right thing(正しいことをせよ)」へと進化。これには、テクノロジー企業としての成長に伴い、より積極的に人と組織の在り方を考えていこうという意思が込められています。

Googleは、世界最大級のビッグテックであり、一見合理主義的でドライな印象を受けますが、実は驚くほどEQを重視する企業文化を持っています。同社が行ったプロジェクトの内容を見ていくことで、EQがイノベーションを生み出す重要な要素であることが理解できるでしょう。

EQは経営やビジネス現場にどう生かされる?

そもそもEQとは、「感情知性」「心の知能指数」などと日本語訳される概念です。自己認識、自己管理、動機付け、共感、社会的スキルという5つの要素で構成されています。

従来のビジネスで重視されてきたIQ(知能指数)だけでは、VUCAと呼ばれる予測不可能な時代において、組織の成功を担保することが難しくなっています。そのような中で、EQの重要性が、これまで以上に語られるようになってきたのです。

EQが高い人には、

  • 感情を冷静に、正しく表現できる
  • ストレスに強く、冷静に対応できる
  • 他人の気持ちを観察し、共感できる
  • チームワークが得意で、リーダーシップを発揮できる
  • 柔軟性があり、変化に対応しやすい

などの特徴があります。

ビジネス現場においては、人間関係の構築、共感、ストレス管理、チームワークの発揮、問題解決能力の向上などにつながりやすい傾向があるといえます。また、EQはIQと異なり、訓練で高めることもできるとされています。自己観察、瞑想・マインドフルネス、傾聴などがその有効な手段です。

Googleでは10数年前からEQに関連したプロジェクトを実施し、現在のような盤石で先進的な立場を維持しています。同社の取組みについて、解説していきます。

Googleが行うEQに関する取組み

SIYプログラム:ビジネスリーダー向けEQ向上プログラム

Googleは2007年に社内のEQ向上のための独自プログラム「Search Inside Yourself (SIY)」を開発しました。このプログラムは、ビジネスリーダー向けのEQ向上プログラムとして注目を集め、2012年には社外にも公開されました。

EQを高めることのメリットは、リーダーシップの改善、業務効率化、エンゲージメント向上など。それがひいてはイノベーション人材の育成やビジネスリーダーの育成につながっていくとGoogleは考えているのです。

Project Oxygen:優れたマネージャーの特性にEQが関連

2008年、Googleは「優れたマネージャーとは何か」を解明するため、「Project Oxygen」という大規模な研究プロジェクトを開始しました。優秀なマネージャーが取っている、効果的な行動を特定することを目的として、数千件のパフォーマンスレビュー、従業員サーベイ、面接記録などを分析。その結果、優れたマネージャーの8つの特性が明らかになりました。

驚くべきは、その特性の多くがEQに関連するものだったこと。

  • 良きコーチであること
  • チームメンバーの成功とウェルビーイングに関心を持つこと
  • 効果的なコミュニケーションを行うこと
  • 心理的安全性のある環境を作ること

などはEQ、つまり人の感情に関連する行動です。優秀なマネージャーは、こうした行動を意識的か無意識的か、積極的に取っていることがわかったのです。

テクノロジー企業のマネジメントであっても、技術や専門知識よりEQの役割が重要であることは大きな発見でした。その後Googleでは、これらの特性要素をマネージャー育成プログラムや、マネージャーの評価基準として活用しています。

Project Aristotle:心理的安全性づくりに欠かせないEQの要素

さらにGoogleは2012年、最高のチームを作るためのプロジェクト「Project Aristotle」を立ち上げました。データ、インタビュー、学術研究などを参考にしながら、180以上のチームを2年間かけて分析。そして最も重要な要素として浮かび上がったのが「心理的安全性」でした。

心理的安全性とは、チーム内で安心して意見を言えたり、リスクを取ったりできる環境のことです。「失敗を恐れずに新しいアイデアを提案できる」「少数意見でも尊重される」「個人の違いが受け入れられる」などはまさにEQが高い環境といえます。

そのような環境があれば、従業員は新たなチャレンジをしやすくなり、イノベーションや事業成長をもたらす可能性が高まるのです。

この「心理的安全性」という概念は、その後Google社内にとどまらず、ビジネス界全体の組織づくりに関するアプローチとして広く知れ渡りました。

EQ経営の実践 - テクノロジーとEQをいかに融合できるか

Googleは上記のようなプログラムや研究プロジェクトを経て、具体的な施策を行っています。

例えば、採用プロセスの改革です。技術力だけでなく、共感力やコミュニケーション能力も重視するよう、採用基準を改変しました。他にも、定期的にフィードバックセッションを行い、オープンなコミュニケーションを促進したり、EQを重視したリーダー育成プログラムを実施したりして、組織全体のEQレベル向上を図っています。

Googleは現在、従業員満足度が高く、継続的にイノベーションを生み出せる、強い組織文化をもった企業となっています。その背景には、EQの要素が確実にあったのです。

Googleがこれらの取組みを、すべてデータに基づいて実施していることにも注目です。EQはどうしても「感覚的なもの」と捉えられがちですが、Googleではデータ分析によってその重要性を実証し、システマティックに組織に組み込んでいます。

多くの日本企業では、まだEQの概念が浸透しておらず、「個人の資質」に寄った捉え方をしてしまうことも多いでしょう。しかし、EQは組織の成功に直結する要素として、数値的に育成・評価することが可能なのです。

テクノロジーが発展すればするほど、むしろ人間的な要素の重要性は増していく、というのは示唆に富む内容です。人々の感情に冷静に、適切に対応できる能力が、これまで以上に重要になっているのです。これからの時代、組織の成功はテクノロジーとEQをいかに融合できるかにかかっているのかもしれません。

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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