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2024.12.19|経営・マーケティング
昨今、新規顧客の獲得コストは年々上昇し、多くの企業が集客に苦心しています。そんな中、新規獲得よりも既存顧客や従業員の維持・定着を優先する経営戦略「リテンションファースト経営」が注目を集めているのをご存知でしょうか。本記事では、長期的で持続可能な成長を目指す「リテンションファースト経営」の本質的な価値を理論面から解説するとともに、ZOZOの事例を通じて具体的な実践方法をご紹介します。
目次
デジタル化の進展やSNSの普及により、生活者は商品・サービスの選択や購入において、多様な選択肢を持つようになりました。その結果、新規顧客の獲得コストは年々増加し、企業の負担としてのしかかっています。
また、情報過多の時代において、膨大な選択肢から選ぶことに疲れ、「信頼できる相手と継続的に関係を築きたい」という生活者側のニーズもあります。単に良い商品やサービスを提供するだけでなく、顧客との信頼関係を築き、長期的な価値を提供できる企業が選ばれる時代になっているのです。
加えて、既存顧客の維持コストは新規獲得コストの5分の1程度(1対5の法則)と言われています。顧客離れを5%改善すれば、利益は25%改善されるという「5:25の法則」も提唱されており、経営効率の観点からも既存顧客との関係性を強化することが重要だと言えます。
このような環境変化を背景に、多くの企業が「リテンションファースト経営」に注目し始めている現状があります。
リテンションファースト経営の本質は、短期的な売上よりも、「顧客との長期的な関係性から生まれる価値(顧客生涯価値:LTV)」の最大化を目指すことにあります。単なる「顧客を維持するための方策」ではなく、「顧客と相互理解を深め、ともに成長していく関係性を築くこと」を主目的とすることである点が大きな特徴です。
継続的に関係を築き、相互理解を深めていくことで、より適切な価値提供が可能になります。例えば、定期的に顧客と対話する機会を設けることで、新たなニーズを発見し、それを新商品開発に活かすことができるのです。売上の安定化だけでなく、新サービスの創出にもつながり、企業の持続的な成長を支える基盤となると言えます。
また、長期的な関係を築いた顧客は、企業や商品のよき理解者となり、SNS等でUGC(ユーザーが生成したコンテンツ)を広めてくれたり、商品改善のためのフィードバックをしてくれたりするようになるでしょう。
ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOは、1998年の創業以来、ファッションEC業界のリーディングカンパニーとして成長を続けています。同社の成長を支えてきたのが、顧客の不安を解消し、継続的な信頼関係を築こうとする姿勢です。
ファッションEC業界では長年、「実物を確認できない」「サイズ感がわからない」という不安から、購入につながりにくいという課題がありました。ZOZOはこの課題を解消できるソリューションを提供することで、業界の常識を覆していきました。
2018年に発表した採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」(現在はサービス終了)は、その代表例です。開発には多額の投資を要し、また想定よりもビジネス的な成果が得られず、一時的に収益の悪化も懸念されました。しかし、「試着できない」という顧客の不安を解消することが、長期的な成長には不可欠だと判断したのです。
現在は、スマートフォンで簡単に足のサイズを採寸できる「ZOZOMAT」へと進化を遂げ、より多くの顧客が利用できるようになっています。また、法人向けには「ZOZOMETRY」という身体計測サービスを展開し、精密な採寸データを取れるようにしています。これらのサービスにより、一人ひとりに最適な商品を提案可能な環境を作りました。
また、これらのデータは商品企画にも活用され、返品率の低減やサイズ展開の最適化にもつながることが容易に想像できます。
さらにZOZOは、商品販売だけでなく、ファッションを楽しむ「コミュニティの形成」にも力を入れています。ダウンロード数1,600万を超えるファッションコーディネートアプリ「WEAR」は、ユーザー同士が互いにスタイリングを評価し、コミュニケーションを取れる場となっています。
ユーザーはトレンドや着こなしのヒントをリアルタイムで把握するだけでなく、フォロー機能やコメント機能を通じて、他者からのフィードバックやアドバイスを得られるのです。また、同じ趣味を持つ仲間とつながることで、ファッションを楽しむ文化が醸成され、ZOZOTOWNでの購買意欲の向上にも寄与しています。
これらの成果が相互に好循環を生み出し、顧客満足度は向上していきます。それが口コミを生み、さらに新規顧客の獲得につながっていくのです。このサイクルが、持続的な成長を可能にしています。
リテンションファースト経営への移行は、一朝一夕には実現できません。なぜなら、1つの施策を実施することにとどまらず、企業文化や業務プロセスを本質的に変革していくことになるからです。ここでは、失敗しないためのリテンションファースト経営の始め方について、段階的に説明していきます。
まず重要なのは、既存顧客の現状を正確に把握することです。具体的には、過去2年程度の購買データや行動データを分析し、購買パターンや離脱タイミングを把握します。また、売上上位の顧客に対しては、可能な限り直接のヒアリングを行い、取引を継続している理由や、不便に感じている点などを詳しく聞いていきます。このプロセスで、思い込みや憶測を取り除き、リアルな顧客の姿を見出すことが重要です。
次に、把握した顧客の課題に対する施策を設計します。ここで注意したいのが、「あれもこれも」と欲張りすぎないことです。ECサイトであれば、顧客管理システムのアップデート、ポイント制度の見直し、アフターサービスの強化など、行った方がいい施策アイデアは次々と出てくるでしょう。しかし、すべてを同時に実行しようとすると、組織が混乱し、かえって顧客満足度を下げてしまうリスクがあります。
実行段階において重要なのは「小さく始めて、確実に成果を出す」ことです。例えば、最初はロイヤル顧客や特に重視したい顧客層に絞って新サービスを試験導入し、その反応を見ながら徐々に対象を広げていくなどです。社内組織の変革が必要であれば、営業担当者の行動様式を変えることから始め、その効果を確認してから社内の仕組みづくりに着手する。このように段階的に施策を展開することで、リスクを抑えながら着実に変革を進めることができます。
リテンションファースト経営実現までの過程では、必ず様々な課題に直面します。例えば、「過度に顧客対応してしまう」ことなどがあります。顧客満足度を高めようとするあまり、採算を度外視したサービスを提供してしまったり、一部の顧客からの過剰な要求に振り回されたりするケースが少なくありません。これを防ぐためには、提供するサービスの範囲と基準を明確に定義し、組織全体で共有しておきましょう。
また、新しい取り組みは、必ず一時的な業務負荷の増加を伴います。その中で現場のモチベーションを維持するために、顧客からの感謝の声や、具体的な成果を共有することは有効です。行う意義を実感しながら変革を進めるのがポイントとなります。
リテンションファースト経営は、一度確立されれば、競合他社が簡単には真似できない強みとなります。顧客との信頼関係を深め、ともに成長していく関係性を築くことで、持続的な企業成長を実現する経営手法です。
その実現には、経営者が強い意志を持ち、全社一丸となって取り組むことが重要です。まずは身近なところから、できることを1つずつ実践していきましょう。顧客の声に真摯に耳を傾け、一つひとつの課題に丁寧に対応していく。その積み重ねは、やがて強固な顧客基盤となり、持続的な事業成長をもたらすはずです。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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