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2025.01.20|経営・マーケティング
「顧客離れを防ぎながら価格を上げるにはどうすれば…」
長らくデフレ経済が続いた日本にもインフレの波が押し寄せ、このような悩みを抱えている企業が増えています。価格競争の罠に陥り、収益性を損なってしまう企業もある一方で、価格競争から脱却できる企業もあります。その大きな違いは、「価値視点」を持っているかどうか。本記事では、ダイソンの事例を交えながら、価値に基づく商品設計と価格設定の方法について解説します。
目次
ここ数十年の日本では、多くの業界で「値下げ競争」が巻き起こってきました。一度値下げ競争が始まると、利益率は低下し、品質向上のために新たな投資をすることも困難になり、さらなる価格競争に巻き込まれてしまう。この負のスパイラルから抜け出すのは容易ではなく、我慢比べに敗れた企業が市場から脱落していくことも珍しくありませんでした。
特に昨今のインフレ環境下では、原材料費や人件費の上昇により、企業の収益は圧迫されています。それでも価格を上げられず、苦しんでいる企業も多いのではないでしょうか。この状況から脱却するためには、「安さ」以外の「価値」を創造し、それに見合った適切な価格設定を行うことが不可欠です。
価格競争から脱却するためのヒントとして、高価格帯でも支持を集める「ダイソン」の事例を紹介します。
世界で初めてサイクロン掃除機を発売したダイソンは、競合製品の2倍前後という価格設定にもかかわらず、多くの支持を集めています。掃除機業界の世界市場シェアでは、2023年度のデータで24.7%と首位。特に日本では、1998年に日本法人を設立以来、国内でも急速にシェアを拡大し、現在ではコードレス掃除機に限ればシェアは50%を超えるとも言われています。
ダイソンが成功した背景は3つに分解することができます。
ダイソンの功績は、なんといっても「サイクロン式」を世に送り出したことです。それまでの掃除機は、紙パックに溜まったゴミが目詰まりを起こし、吸引力が徐々に落ちていくという課題を抱えていました。これは従来の掃除機においては「当たり前」で、「仕方ない」と考えるユーザーも多かった中、「サイクロン式掃除機」の登場はまさに革新的な出来事でした。
「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」というキャッチコピーで記憶している方も多いでしょう。「吸引力が落ちない」という点に差別化要素を絞り、さらにその技術をユーザーにも分かりやすく伝えるため、透明なダストケースを採用したのも従来の掃除機とは異なるアプローチでした。「ゴミが渦を巻いて吸い込まれる様子が見える」ことは、それまでの掃除機ではありえない光景でしたが、誰もが製品の強みを直感的に理解できる設計となっています。
ダイソンには、創業者のジェームズ・ダイソン氏が、5,127個の試作品を経て完成にたどり着いたというストーリーがあります。これを知るだけでも「既存の常識にとらわれず、より良いものを追求し続ける」という企業姿勢を読み取ることができ、ユーザーが高価格を受け入れやすくなっていると考えられます。
ダイソンの製品は、高い機能性とスタイリッシュなデザインを両立させています。従来の掃除機は「隠しておきたい家電」でしたが、ダイソンの製品は「見せる家電」として、インテリアの一部となっています。そして、見た目の美しさだけでなく、使い勝手の向上にも直結しています。軽い操作感や広いヘッド部分の可動域により、家具の下などの届きにくい場所の掃除も簡単にできるようになっているのです。コードレス掃除機というカテゴリーを確立したことで、「必要な時に、必要な場所で、すぐに使える」という新しい価値も創出しました。
ダイソンはこの「技術」「ストーリー」「デザイン」の3要素が相乗効果を生み、価格競争に巻き込まれることなく、市場でのポジションを確立することができました。しかしこれはダイソンにしかできない話ではありませんし、家電のような有形商材に限ったものでもありません。無形の商材を扱うビジネスでも転用可能なものとなります。
では、自社の商品やサービスに、価格競争を超える価値を生み出すにはどうすればよいのでしょうか。まず重要なのは、ユーザーの心をつかむ3つの価値を意識することです。
1つ目は「問題解決力」という本質的な価値です。ダイソンは、「吸引力が落ちる」という従来の掃除機の問題を解決したことが価値になりました。製品開発において、この本質的な価値を見出すためには、表面的なニーズだけでなく、その背景にある本質的な課題を理解する必要があります。
2つ目は「顧客体験」に紐づく感情的な価値です。製品やサービスを使用する際の楽しさ、心地よさ、所有する喜びなどをいかに創出できるかがカギとなります。例えば高級時計ブランドのロレックスは、販売時の接客から修理・メンテナンスまで、すべての顧客接点において最高級の体験を提供することで、ラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。感情的価値を高めるには、商品やサービスとの接点すべてにおいて、細やかな配慮が必要です。
3つ目は「共感価値」です。これは企業の理念や姿勢に共感できることで生まれる価値です。近年は、環境への配慮や社会貢献といった要素も、重要な共感価値となっています。企業姿勢に共感するユーザーは、その分の価格プレミアムを「価値」として積極的に受け入れやすくなります。
価値をもとにした価格設定を行うには、大きく2つのポイントがあります。1つは「価値を高め続けること」、もう1つは「会社全体で価値づくりに取り組むこと」です。
一度作り上げた価値も、時間が経つにつれて陳腐化してしまうことがあります。例えば、かつて画期的だった機能も、やがて当たり前のものになり、特別な価値とは感じてもらえなくなっていくのです。だからこそ、ユーザーと常に対話を続け、新しい価値を見つけ続けることが大切です。
定期的にユーザーインタビューを行い、「こんな機能があったらいいな」「ここが使いづらい」といった意見を集めることは非常に有効です。そして、それを新しい商品づくりに活かしていく。一方で、業界の動きを見て新しい技術やサービスにも目を向けることも重要です。このサイクルを続けることで、ユーザーにとっての価値は、むしろ時間とともに高まっていくでしょう。
同時に、会社全体で価値づくりに取り組む姿勢も大切です。価値づくりは、経営者や商品開発チームだけの仕事ではありません。ユーザーと直接接する人以外でも、価値づくりに関わっているという意識をもつことも重要です。「このお客様がとても喜んでくれた」といった成功事例を社内で共有したり、部署を横断してプロジェクトを立ち上げたりすることを通じて、価値づくりの考え方は広がっていきます。
このように、「価値を高める」と「価値づくりを社内に広める」という活動を両輪として地道に続けることで、価値をもとにした価格設定が可能になります。そしてそれが、息の長い事業の土台となるのです。
価値をもとにした価格設定は、一朝一夕には実現できません。しかし、新しい価値を模索し続けることで、価格競争に依存せず、持続可能な事業成長を実現することができるのではないでしょうか。
価格競争の波に飲み込まれそうになったとき、一度立ち止まって考えてみてください。自社の製品やサービスには、まだ見ぬ価値が眠っているはずです。その価値を丁寧に掘り起こし、育てていく。その積み重ねが、価格競争に巻き込まれない強みを生み、その過程で得られる顧客との信頼関係こそが、持続的な競争優位性を創り出すのです。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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