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2025.03.24|経営・マーケティング
仕事の「属人化」は、企業が持続的に事業を行っていく上でリスクになり得ます。属人化を防ぎ、組織としてのパフォーマンスを最大化するためには、どのようなプロセスが有効なのでしょうか。
戦略コンサルティングファームの代表格、マッキンゼー・アンド・カンパニー。同社の強さの源泉は、個々のコンサルタントの能力だけではありません。組織的なナレッジ(知識や情報)の蓄積と活用の仕組みにこそ、その真髄があります。世界最高峰のナレッジマネジメントから、専門家組織における知識活用のヒントを探ります。
目次
「○○さんがいないと、このプロジェクトは進められません」
こんな言葉を職場で聞いたことはありませんか?
主要取引先との契約業務をベテラン社員が1人で担当していたところ、この担当者が突然の病気で長期離脱してしまい、対応できる人材がおらず、取引に支障をきたした。
これらは、ナレッジの「属人化」の典型例です。
また、次のような例もよくあるのではないでしょうか?
「確か去年も似たプロジェクトがあったはずだけど、どうやって分析していたんだったっけ?」と資料を探し回り、結局は一から作り直すことに…
個人の能力に依存せず、組織として高いパフォーマンスを維持できる体制づくりこそが、持続的な競争力の源泉です。
マッキンゼーでは、過去の類似案件データベースから改善事例を即座に引き出す仕組みを整えています。その結果、他の会社なら数週間かかるであろう調査期間を大幅に短縮し、クライアントから高評価を得ているのです。およそ100年間にわたり世界トップのコンサルティングファームとしての地位を保っているのは、こうした組織的な知識の蓄積と活用の仕組みが確立されているからなのです。
具体的な実践方法の一例は、以下のとおりです。
ナレッジマネジメントとは、ただ情報を保存するだけではなく、組織内の知識や経験を「見える化」し、再利用可能にすることで、仕事のアウトプットの質を高め、イノベーションを促進する基盤とするものです。
マッキンゼーでは社内ナレッジ共有システムを構築し、世界中のコンサルタントが活用できる体制があります。産業別・機能別の体系的な分類や、グローバルアクセスを可能にするクラウド基盤など、実用性を重視した設計がなされている、いわば「知恵の図書館」として、機能させているのです。
具体的なナレッジの整理方法を少し見ていきましょう。
多くの組織で効果を上げているのは「タグ付け」による多角的な分類です。ある企業では、すべてのプロジェクト資料に「プロジェクトタイプ」「関連部門」「顧客業種」「担当者名」といった複数のタグ付けをすることで、例えば「製造業の品質改善で佐藤さんが担当したプロジェクト」といった複合条件での検索を可能にしています。
このとき「検索のしやすさ」も重要です。マッキンゼーのシステムでは、過去のプロジェクト事例を「製造業で在庫管理を効率化した事例を教えて」と、自然言語で検索できるような、生成AIを活用した仕組みが構築されています。関連する過去のプロジェクト資料だけでなく、「小売業の在庫管理改善」といった類似事例も表示されます。
またマッキンゼーでは、案件が終わるたびに必ず「振り返りの記録」を残すルールがあります。
例えば、大手食品メーカーの海外進出プロジェクトを完了した際には、
「○○国で、食品安全規制の壁に直面した」
「最初は現地法人設立から始めようとしたが、輸出から段階的に進める戦略に切り替えたことで、リスクを抑えながら市場参入できた」
といった具体的な経験と教訓を記録していきます。
これにより、リアルな経験を共有することができるのです。
また、情報の鮮度を保つための更新ルールも重要です。「情報には賞味期限がある」と考え、情報の種類によって見直し期間を設定していくのです。例えばある製造業では、品質管理マニュアルに「最終更新日」「更新責任者」「次回更新予定」「適用条件」を明記することで、古い情報を使ってしまうリスクを減らしています。
技術・体制的な仕組みだけでなく、組織カルチャーも重要です。マッキンゼーでは以下のようなナレッジシェアの取り組みを行っています。
これらの仕組みにより、組織的なナレッジ活用がカルチャーとして定着していきます。
ナレッジマネジメントの仕組みは、フィードバックと発想の転換によって進化し続けます。
ナレッジマネジメントの仕組みを取り入れた場合も、定期的な仕組み自体の改善が必要です。「この資料、実は使いづらかった」といった声を拾い上げる仕組みがあることで、情報の質は向上し、時代に応じた表現や共有方法にフィットさせていくことができるからです。
マッキンゼーでは、情報を利用した後に必ず「この情報は役に立ちましたか?」という簡単な質問に答える仕組みを導入しています。
中小企業においては、月1回の全社会議などがあれば
「今月使った資料で良かったもの、改善したいもの」
をシェアする時間を設けるのもおすすめです。
「営業マニュアルの手順説明がわかりやすかった」
「製品仕様書は専門用語が多すぎて理解しづらかった」
といった生の声を集めることで、より使いやすい情報に改善していくことができます。
フィードバックを集める際は、「批判しやすい雰囲気づくり」がポイントになります。「改善点を指摘することは、組織への貢献になる」という雰囲気、カルチャーを育てることが大切です。
ある製造業では、「A製品は生産開始から3時間後に不良率が上昇しやすい」といった傾向を発見し、問題が発生する前に対策を講じられるようになりました。このように、過去の生産データを分析して「製品別の不良発生パターン」を見える化できると、より発展的な改善につなげることが可能です。
ナレッジシステムは新人教育にも活用できるでしょう。先輩たちが築き上げた知見と経験が体系的に学べる教材に変わるのです。
このように、ナレッジの蓄積は「効率化」だけでなく「新たな価値創造」につながることを意識すると、より前向きに整備していくことができるのではないでしょうか。
個人の記憶や経験に頼るのではなく、組織全体の「知恵」を創り上げるナレッジマネジメント。マッキンゼーから学べるのは、データベースを導入すれば良いというわけではないということです。
大切なのは「この情報は自分だけのものではなく、組織みんなの財産なんだ」という意識を育てること。どのような組織でも、今日から始められることがあります。
小さな一歩から始めて、徐々に「ナレッジを共有するカルチャー」を育てていきましょう。一人ひとりの知恵を組織の財産に変えていくことが、これからの組織の競争力の源泉となるはずです。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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