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「うちはずっとこうやってきた」から抜け出す – レジリエンスの高い組織のつくり方

2025.11.23経営・マーケティング

コロナ禍や人材不足、さらには急速なデジタル化など、中小企業を取り巻く環境は先行きが読みにくくなっています。こうした変化の時代に求められるのは、単に困難に「耐える」力ではなく、変化を受け止めながら柔軟に対応し、成長へとつなげていく組織の力です。この記事では、そのような「レジリエンス」の高い組織をつくるためのポイントをご紹介します。

そもそも「レジリエンス」とは何か

レジリエンスという言葉は、もともと物理学で「弾力性」や「元の形に戻る力」を指して使われていました。これがビジネス分野では、困難や逆境を乗り越えて回復し、さらに成長へとつなげる力として注目されるようになっています。

いまの企業を取り巻く環境は、外部環境の変化や顧客ニーズの移り変わりがこれまで以上に速く、5年前に通用したやり方が現在も有効とは限りません。そのような状況だからこそ、レジリエンスは企業が生き残り、継続的に成長していくために欠かせない要素になっています。

レジリエンスには、個人が持つ力と、組織全体として備える力という、2つの側面があります。

個人のレジリエンス

仕事で大きな失敗を経験したとき、すぐに気持ちを立て直せる人もいれば、しばらく落ち込みを引きずってしまう人もいます。こうしたストレスや逆境への向き合い方の違いが、個々のレジリエンスの差として表れます。新しいことに興味を持って取り組める好奇心や、気持ちを柔軟に切り替える力、前向きな未来像を描ける力が強い人ほど、レジリエンスが高いと考えられています。

組織のレジリエンス

組織のレジリエンスは、単に個々の能力を足し合わせたものではありません。むしろ、予想外の危機や環境変化に直面したときに、組織として状況に対応し、従業員一人ひとりの力や意識を生かして困難を乗り越え、より良い状態へと進化していく「組織全体の適応力」を指します。

たとえば主力商品の売上が急に落ち込んだ場合、レジリエンスの高い組織では、現場のスタッフが自主的に顧客の声を集め、改善のアイデアを出し合います。それらの情報は部門を超えて共有され、迅速に新たな戦略づくりと実行に結びつきます。対照的に、レジリエンスの低い組織では、責任の所在探しに時間を取られたり、対応が遅れて機会を逃してしまったりすることが多くなります。

レジリエンスの高い組織が持つ3つの特徴

レジリエンスの高い組織には、いくつかの共通点があります。ここでは、その中でも特に重要な3つのポイントを取り上げてご紹介します。

心理的安全性が確保されている

心理的安全性とは、自分の考えや気持ちを、相手が誰であっても安心して口にできる状態を指します。「こんなことを言ったら否定されるのでは」「上司に意見すると評価が下がるのでは」といった不安を抱かずに働ける安心感が、組織全体にしっかり根づいている状況です。

たとえば、スタッフが「このやり方では顧客の反応がよくない」「この工程には無駄があるかもしれない」と感じたときに、上司やベテラン社員に対しても率直に意見を伝えられるかどうか。こうした日常の小さな場面での“言いやすさ”が、組織のレジリエンスを大きく左右します。

多様な視点を持つメンバーがいる

似たような経歴や考え方の人だけで構成された組織は、一見するとまとまりがよく、スムーズに動いているように見えます。しかし予期しない変化が起きたとき、発想が画一的になり、斬新な解決策が生まれにくいという弱点があります。

一方、レジリエンスの高い組織では、異なる価値観や多様な考え方を受け入れる姿勢が育っています。多様な視点が尊重されることで、同じ問題でも複数の切り口から検討できるようになり、変化に対する適応力が大きく高まります。「これまで通り」で留まるのではなく、「もっと良い方法はないか」と問い続ける組織こそが、環境の変化に強いと言えるでしょう。

変化を「脅威」ではなく「機会」と捉える姿勢

レジリエンスの高い組織では、失敗を避けるのではなく、そこから学び、再び挑戦する姿勢が根づいています。「次はどうすればより良くできるか」を考える前向きなマインドセットが、組織の文化として共有されているのです。

たとえば、市場の変化を「顧客ニーズが変わってしまった」と悲観するのではなく、「新たな顧客層を開拓するチャンスだ」と捉える。人材不足を「良い人材が採用できない」と嘆くのではなく、「今いるスタッフの力を最大限に引き出す仕組みをつくろう」と発想する。こうした視点の違いが、組織の成長力を大きく左右します。

レジリエンスを高める実践方法

ここからは、組織のレジリエンスを実際に高めていくための、具体的な取り組みをご紹介します。

失敗から学ぶ仕組みをつくる

成功や失敗の経験を振り返り、それを分析して次に生かせる形でノウハウとして蓄積する仕組みが欠かせません。たとえば月に1回、チームで振り返りの場を設け、「今月うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」を共有します。その際、経営者やリーダー自身が自分の失敗を率先して開示することも重要です。リーダーが失敗を語る姿勢を示すことで、スタッフも安心して課題を共有できるようになり、組織全体に健全な学習文化が根づいていきます。

権限委譲をして意思決定のスピードを上げる

変化の激しい時代には、素早い意思決定が欠かせません。しかし、あらゆる判断を経営者や管理職だけで行っていては、状況への対応が遅れてしまいます。現場のスタッフに適切な権限を委譲することで、外部環境の変化や予期せぬトラブル、計画の遅れが発生しても、社員それぞれが主体的に問題解決へ動けるようになります。

具体的には、まず決裁権限の見直しから始めると良いでしょう。たとえば「3万円以内の経費は現場リーダーが判断する」「顧客対応の初期判断は担当者に任せる」など、金額や内容に応じて段階的に権限を委譲します。そのうえで、判断基準や対応方針をまとめたガイドラインを整備し、誰もが迷わず判断できる状態にすることが重要です。

新たな風を取り入れる習慣をつくる

組織の内部だけで物事を考えていると、どうしても視野が狭くなり、発想が固定化してしまいます。そこで、新しい刺激を取り入れる習慣を持つことで、異なる視点やアイデアが生まれ、組織全体の柔軟性が高まります。

異業種交流会への参加や他社の視察など、外部から学ぶ方法はいくつもあります。また、社外だけでなく、社内の若手スタッフから意見を吸い上げる場をつくることも非常に有効です。デジタルネイティブやZ世代と呼ばれる若い世代は、ベテランとは異なる発想や感性を持っています。その意見に耳を傾けることで、組織に新しい風を取り入れることができるでしょう。

レジリエンスを阻む「見えない壁」を取り除く

レジリエンスを高める取り組みを続けていても、実は組織の中には目に見えない「壁」が存在する場合があります。こうした障害に気づき、一つずつ取り除いていくことが、組織が本当の意味でレジリエンスを高めるための重要なステップになります。

経営者の「守り」の姿勢

守りの姿勢は、気づかないうちに組織全体へ広がっていきます。経営層がリスクを過度に恐れていると、スタッフも新しい提案を控えるようになり、組織全体が次第に硬直してしまうのです。特に企業規模が大きくなるほど、リスク回避を目的とした“守りのルール”が増える傾向があります。しかしルールが多くなるほど現場の動きは鈍くなるため、むしろ「なくせるルールはないか」という視点で定期的に見直すことが重要です。

「今までのやり方」への過度な執着

過去の成功体験は、ときに組織の成長を妨げる要因にもなります。「この方法でずっとうまくいってきた」という実績があると、変化の必要性を感じづらくなるためです。しかし、市場環境は常に変化しており、5年前に最適だった戦略が今も通用するとは限りません。

そのような状況で、「うちは昔からこのやり方だ」という言葉がよく聞かれる組織は注意が必要です。環境の変化に取り残されないためには、自社のやり方を定期的に見直し、必要に応じて柔軟にアップデートしていく姿勢が欠かせません。

情報の偏在と縦割り構造

情報が一部の人に偏っている状態では、問題が起きたときに迅速な対応が難しくなります。また、部門間の壁が高く情報が共有されない縦割り構造も、組織全体の最適化を妨げる要因となります。問題が大きくなってから発覚し、対応に追われるという悪循環を避けるためには、情報を広く共有し、誰もが組織の状況を把握できる仕組みを整えることが重要です。情報の透明性は、スタッフ一人ひとりの主体性を育む効果もあります。

まとめ

レジリエンスの高い組織は、一朝一夕で築けるものではありません。しかし、地道に取り組むことで、その文化は強さとしなやかさを兼ね備えたものになります。

まずは、自社にどのような「見えない壁」があるか、そしてどのような改善策が実践できそうかを確認してみましょう。会議で意見が出にくいこと、同じミスが繰り返されること、スピード感が不足していることなどのサインに気づき、一つずつ対処していくことが、レジリエンスの高い組織への第一歩となります。

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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