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2023.08.08|ライティング
約500万年も遠い遠い昔のこと。
ヒトとチンパンジーの最後の共通の祖先が進化の流れで分岐し、私たち人類が誕生しました。最古の人類であるアウストラロピテクスは直立二足歩行を獲得したことで、手が自由になり道具を器用に使えるようになりました。やがて、手の器用さが脳の発達を促して、今日の高度な知能を持つ人類を創り上げてきたと言われています。
一方で、言語の起源を辿るとその歴史は浅く、いまから約15万年前のことです。さらに、文字が誕生したのはわずか6,000年前のこと。この事実は、言語というツールがいかに高度な知的活動のうえに成り立っているのかを物語っています。
だからこそ何気ない会話をしているときでも、スマホで記事を読んでいるときでも、脳は言語の処理に多大なるエネルギーを必要とします。そのためヒト以外の霊長類の脳は体のエネルギーの10%程度しか使わないのに対し、ヒトの脳は体のエネルギーの20%ものエネルギーを消費するのです。
今回の記事では、このような言語と脳の関わりについて焦点を当てながら、ヒトの「理解する」という知的活動について深掘っていきます。そしてこの科学的な視点をライティングに応用し、どのようにすれば「わかりやすい文章」が書けるようになるのかを考えていきます。
そもそも「理解する」とは何でしょうか。
「理解する」という言葉の定義を巡っては、古代からさまざまな議論がなされてきました。
たとえば古代ギリシアの哲学者・アリストテレスは、著書『形而上学』のなかで、「理解」について次のような言葉を残しています。
"我々が或る物事を知っていると言いうるのは、我々がその物事の第一の原因を認識していると信じるときのことだからである"(P.32, 岩波文庫)
ここでいう「第一の原因」とは、アリストテレスが唱えた万物の運動の根本原因のことです。動かすもの(原因)と動かされるもの(結果)の関係において、他によって動かされることがなく、他を動かす「不動の第一動者」のことを指します。
たとえば宇宙の起源をたどると、やがて「ビッグバン」という「第一の原因」にたどり着きます。このような第一の原因を「認識している」という信念こそが、アリストテレスは「理解の正体」だと述べたのです。
アリストテレスが「理解するとは、第一の原因を認識していると信じることだ」と定義している一方で、脳神経科学の世界では「理解する」という知的活動についてまったく異なる見解を示しています。
ある脳神経科学者はヒトの理解の仕組みについて、「神経間のつながりが基本的な理解の源になる」と説明しています。
私たちの脳はさまざまな神経が複雑に絡み合い形成されています。脳は、外部環境から得られるさまざまな情報や自身の内に湧き上がる感情をもとに、思考したり筋肉を動かしたりします。人が手足を動かすときは、五感で得た情報を大脳皮質がキャッチし、脊髄に対して運動の指令を出し脊髄が筋肉を動かすという流れです。
そして人が行動を起こすためには、神経のつながりが欠かせません。「理解する」においても、神経同士のつながりが理解を深める源になっているのです。すでに認知している事実と新たに認知した事実の架け橋ができることで、「理解できた」と感じることができるのです。
たとえば、学校の授業について思い出してみてください。
小学1年生で、いきなり九九や難しい漢字は習いません。1+1という足し算から始めて、数字の基礎を覚えていきます。九九を習ったときには、前提知識としてある足し算・引き算とのつながりを感じられて、九九が理解できます。つまり、人が文章や言葉を理解するときも、すでに認知している情報に新たな情報とのつながりを発見したときに起こるのです。
そして、わかりやすい文章はほぼ例外なく「具体例」が入っています。なぜなら、文章において「具体例」はすでに認知している情報と新たな情報との「つながり」をつくる役割を果たすからです。
脳神経科学の視点では、私たちが何かを理解するときにおこる仕組みとして以下の4つの構造的なパターンが考えられます。
具体例は、これらの4種類の「つながり」をつくるのを助け、私たちの理解を促します。
以下で、まさしく具体例を使いながら解説していきましょう。
共通性の発見とは「2つ以上のもの同士になんらかの共通部分を発見した場合に理解が深まる」ことです。
たとえば次の文章を読んでください。
(A)
M&Aアドバイザリーとは、会社売却を検討するオーナー経営者や買収を検討する企業からの依頼を受け、クライアントの経営戦略・事業承継に関する方針やM&Aを推進する社内チーム体制に基づき、具体的にM&Aを検討し実行するためのサポート役を指します。
(B)
M&Aアドバイザリーとは、たとえるなら「ビジネスにおける坂本龍馬」です。かつて坂本龍馬が「薩摩藩と長州藩の仲介役として薩長同盟の立役者」となったように、会社売却を検討するオーナー経営者や買収を検討する企業の仲介役として、具体的にM&Aを検討し実行するためのサポート役を担います。
上記(A)と(B)の文章は、どちらも「M&Aアドバイザリー」という職業について説明した文章です。そして(B)の文章は、「M&Aアドバイザリー」と「坂本龍馬」の共通性に着目して「たとえ」の文章を入れています。
M&Aアドバイザリーの仕事をあまり知らない人でも、すでに認知している事実(坂本龍馬)と新たに認知した事実(M&Aアドバイザリー)の共通性を発見することによって、ヒトは「理解できた」と感じるのです。
関係性の発見とは「完全な全体像が分からなくても、複数の現象の間に関係を見つけることでものごとが理解できる」ことです。
たとえば次の文章を読んでください。
(A)
最近の研究によれば、適度な運動は認知機能の向上に役立つとされています。
(B)
最近の研究によれば、適度な運動は認知機能の向上に役立つとされています。たとえば、佐藤さんは最近、毎日のランニングを始めました。その結果、彼は仕事の集中力が上がったと感じています。
上記の(A)と(B)の文章を見ると、適度な運動と認知機能の向上という関係性が示唆されています。そして(B)では、佐藤さんの例を通じて、運動と集中力の関係性が具体的に示されており、読者はこの関係性を発見しやすくなります。このように、すでに認知している事実(身近な例)と新たに認知した事実(最新の研究)の関係性を発見することによって、ヒトは「理解できた」と感じるのです。
グルーピングの発見とは「グループ分けできる法則を発見することで理解につながる」ことです。
たとえば次の文章を読んでください。
(A)
果物は色や形、味によってさまざまな種類があります。
(B)
果物は色や形、味によってさまざまな種類があります。たとえば果物を色で分類すると、赤い果物にはリンゴやイチゴがあり、黄色い果物にはバナナやレモンがあります。また果物を味で分類すると、甘い果物にはメロンや桃が、酸っぱい果物にはキウイやグレープフルーツが含まれます。
上記の(A)と(B)の文章を見ると、果物を色や味によってグループ分けすることが示されています。そして(B)では、具体的な果物の例を挙げて色や味によるグルーピングを示しています。このように、具体的なカテゴリーやグループを示すことで、読者は情報の整理や理解が容易になります。
ルールの発見とは「仕組みや数量的な関係性、原理原則を見つける」ことです。
たとえば次の文章を読んでください。
(A)
ゲームには、特定のルールや戦略が求められます。
(B)
ゲームには、特定のルールや戦略が求められます。たとえばチェスでは、各駒に特定の動き方が定められており、王を詰ませることが勝利の条件となります。また、ゲームの基本ルールとして「順番を守る」ことが重要であり、それを無視するとゲームに敗北することが多いです。
上記の(A)と(B)の文章を見ると、ゲームのルールや戦略の重要性が示されています。そして(B)では、具体的なチェスのルールや、ゲーム全般の基本ルールを示しています。このように、具体的なルールや戦略を示すことで、読者はその事象の背後にある構造や原則を理解しやすくなります。
以上のように、わかりやすく読みやすい文章にはたいてい具体例が盛り込まれています。それは「具体例」を盛り込むことで、理解に欠かせない神経間のつながりが生まれるからです。
具体例は、読者がすでに知っている内容や身近にあるものを例に出して、補足するために使います。このときに、前章で解説した共通性やグルーピングの発見につながり、理解ができるというわけです。
私たちの脳は、遥かなる過去からの進化の中で、情報を処理し、理解する力を獲得してきました。そして、その力の中心には「つながり」が存在します。言語、文字、そして具体例を通じて、私たちの脳は新しい情報と既知の情報を結びつけ、深い理解へと導いてくれます。
この記事を通じて、読者の皆様にも「理解する」という行為の奥深さや、具体例の力を感じていただけたら幸いです。そして、私たちが日常で遭遇するさまざまな情報や知識に対して、新しい視点でアプローチできるようになることを願っています。
最後に、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉を借りて、この記事を締めくくりたいと思います。
『何かを学ぶとき、実際にそれを行なうことによって我々は学ぶ。』
言葉や文章を通じて、私たちが新しい知識や視点を得ることは、実際にその知識を生活の中で活用することと同じくらい価値があります。読むこと、学ぶこと、そしてそれを実生活に適用すること。これらは連鎖的に私たちの理解を深め、人生を豊かにしてくれます。
今、この瞬間も、あなたの脳は新しい「つながり」を求めています。日常の中で出会う情報や経験を、これまでの知識や経験と結びつけて、新しい理解や発見へと導いてください。そして、その「つながり」が、あなたの人生の中で新しい価値や意味を生み出すことでしょう。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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