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2024.06.13|ライティング
『規矩作法 守りつくして 破るとも 離るるとても 本を忘るな』-千利休
この歌は茶の湯を大成した千利休が詠んだ一句。「守る」「破る」「離れる」の3文字から「守破離(しゅはり)」の戒めとして有名です。冒頭の「規矩(きく)」は、規則や手本、つまり考えや行動の基準のこと。この詩が示すのは、教えを忠実に「守」り続け、ときにはそれを「破」り、「離」れて独自の境地を築こうとも、「決して基本は忘れてはならない」との戒めを表現しています。
ライティングの世界においても、記事執筆のための基本は欠かせません。基本を忠実に守り、文章のイロハを頭に叩き込むのは非常に重要なことです。
かく言う私もこれまで、様々な記事を執筆してきましたが、ある時ふと「冗長表現」について疑問を覚えました。
「冗長表現はすべてが悪なのか?」
文章術に関するマニュアルを読むと、冗長表現を避けるように書かれたものを多く目にします。たしかに、冗長表現ばかりだと、文章が長く感じて読みにくかったり、そもそも読むこと自体をやめてしまいたくなることもあります。
しかし、冗長表現は100%悪い訳ではなく、文法上も誤りではありません。
では、なぜ冗長表現は悪だと言われるのでしょうか。
この記事では、文章の冗長表現について解説します。
冗長表現とは、文章中に内容とは無関係な言葉や表現が多く、読みづらくなっている状態を指します。不要な言い回しが含まれているため文章自体が長くなり、意図が伝わりにくくなります。
▼代表的な冗長表現
例1)
「〜ということ」「〜すること」|文末の冗長表現
例2)
「が」「の」|助詞の繰り返し表現
例3)
「後で後悔する」「一番最初に」|類語の二重表現
投資家でビジネス書作家のムーギー・キム氏は、著書「世界トップエリートのコミュ力の基本」のなかで以下のように指摘しています。
『スマホ画面で文章を読むことが増え、情報がますます簡略化されるこの2020年代、少しでも長いと感じられたら、その文章はまず読まれない』
とくに、モバイルが主流の現代では、文章が長くなればなるほど読まれない傾向にあります。そもそも、ネットで文章を読む人の多くは、文章が好きなわけではなく、興味がある情報を収集するために仕方なく文章を読んでいるのです。
このような背景からも、文章はなるべくシンプルにわかりやすく、冗長表現を避けるべきと言われています。
「文章の基本ルール」として、「冗長表現はNG」とするのは賛成です。過度な冗長表現は、意図が伝わりにくく「結局何が言いたいのか」が曖昧になりがちです。
しかし、だからといって「冗長表現は完全に避けるべき」でもありません。冗長な文章には、冗長だからこそのニュアンスや意図があります。
例えば、冗長表現の代表格と言われる「〜することができる」。
「〜することができる」は「〜できる」に言い換えられるため、冗長表現と認識されやすいのですが、厳密には「〜することができる」と「〜できる」はニュアンスが異なります。
「〜することができる」「〜できるの違い」について整理してみましょう。
▼「〜することができる」「〜できるの違い」の文法構造
例1)
山田さんは運転することができる
山田さんは→主題
運転することが→主語
できる→述語
例2)
山田さんは運転できる。
山田さんは→主語
運転できる→述語
例1)の場合、「山田さん」は主題であり主語ではありません。仮に主語と考えてみても「山田さんは できる」と、文章として成立しないため、主語は「運転することが」となります。
したがって、スポットがあたるのは「運転すること」であり、「運転することができる」>「山田さんは」と主題でなく行動(主語)がメインとなります。
一方、例2)の場合、「運転できる」の主体である「山田さん」が主語となります。「運転できるのは他の誰でもない、山田さんですよ」と人物にスポットが当たります。
このように、どちらも可用表現であり、文法的にも何ら誤りはなく、例1)の「運転することができる」は「(得意でないが)平均的に運転はできる」というニュアンス。一方、例2)は「山田さんは(普段から当たり前のように運転をしていて)自信を持って運転できる」というニュアンスに捉えることができないでしょうか。
また、読み手に強制するのではなく自由に選んでもらう際にも、「することができる」は有用です。「することができる」には、「してもいいし、しなくてもいい」という曖昧なニュアンスも含まれています。
「このホテルに宿泊される方は、屋上のプールを利用することができる」などホテルの利用規約やサービスの契約書類によくみられる表現ですが、利用者が自由に選択できるように配慮されているからこそ。このように、考えや思い、文章のニュアンスによっては冗長表現が正しいケースもあるのです。
シンプルでわかりやすい文章は、読者に余計な負担をかけずに思いを伝えられます。ただし、あえて冗長表現を活用し文章に緩急をつけることで、伝えたい部分を強調したり文章にメリハリをつけたりすることもできます。
また、漢字が多く読みづらいと感じる文章であれば、あえて冗長表現を活用して、文末のひらがなを増やすのもひとつの手です。
文章作成で大切なのは、いかに読み進めてもらえるか。読み進めてもらうためには、「冗長表現=悪」という固定観念を拭い去り、テンポ良く思いが伝わる記事にする必要があるでしょう。
茶道には、表千家・裏千家・武者小路千家の代表的な流派があります。それぞれの違いは、お茶の点て方や道具を拭き清める袱紗の色、お辞儀の仕方、といった細かな作法です。ただし、どの流派にも共通するのが、お客様に美味しいお茶を飲んでいただきたいという”気持ち”です。
ルールや作法は大切ですが、最も大事なのは、目の前に座るお客様です。
きっとそれは、「顔は見ずとも、“気持ち”や“想い”を伝えるライティングの世界」でも同じことではないでしょうか。
ライティング初心者はまず「冗長表現を使用しない」という一般的なルールを守るよう教えられます。しかし、最も大事なのはルールの意図を理解した上で、どれだけ読者に“想い”を伝えられるか。「冗長表現=悪」と決めつけるのではなく、読者に “気持ち”が伝わる表現を心がけてみましょう。
AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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