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経営理念は、他社に模倣されない唯一無二の競争優位性である

経営・マネジメント

理念経営2.0

会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ

著者:佐宗 邦威
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2023年5月17日

著者について

佐宗邦威(さそう・くにたけ) 。株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー 多摩美術大学 特任准教授。山本山、ソニー、パナソニック、オムロン、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、KINTO、ALE、クロスフィールズ、白馬村など、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーションおよびブランディングの支援を行うほか、各社の企業理念の策定および実装に向けたプロジェクトについても実績多数。

本の概要

経営理念を「つくるだけ」で終わっていて、それが組織のなかに「生きている」感じがしない。そのような悩みを抱えている経営者は、全国にたくさんいるだろう。

リモートワークやワークライフバランスを重視した「自由な働き方」が社会に広がり、従業員たちにとっては間違いなく以前より「働きやすく」なった。しかし、自由な働き方によって、社員どうしの仲間意識が薄れたり、社員を組織につなぎとめたりするのが難しくなったのも事実だ。経営者たちは、日々このジレンマに頭を抱えている。

そんな悩める経営者にこそ、私は本書をおすすめしたい。本書『理念経営2.0』では、「組織のDNA」としての経営理念を制定し、社内に浸透させて社員一人ひとりの日々の行動に反映させる方法が解説されている。

本書を一読することで、経営理念を単なる「額に入れられた標語」ではなく、社内のすみずみにまで根付く組織のDNAへとアップデートすることができるかもしれない。

読んだ感想

“A truly great business must have an enduring ‘Moat’ that protects excellent returns on invested capital.”
(本当にすばらしいビジネスは不朽の「お堀」が存在し、それによって高い利益が守られている。)

この言葉は、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)の会長兼CEOであり「投資の神様」として名高いウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏が語ったものです。彼はいくつもの取材やインタビューにおいて、この‘Moat’という概念の重要性を繰り返し述べており、‘Moat’こそが企業の競争優位性の源泉だと語っています。そして私は本書『理念経営2.0』を読み進めながら、優れた経営理念こそが模倣不可能な組織力や組織文化を醸成し、やがて卓越した‘Moat’を創り上げていくのではないかという想いが込み上げてきました。

そもそも‘Moat’とは、日本語になおすと「堀」のことです。事業という「城」が外敵(競合)から攻められたとき、事業を守り続ける「堀」の役割を果たすのは企業独自の強みです。つまりウォーレン・バフェットが語る‘Moat’とは、事業を長く継続し、お客様に選ばれ続けるための競争優位性ということができるのではないでしょうか。

’Moat’は、各企業の事業内容や規模、属する市場によって様々な形態をとります。たとえば、EC最大手のAmazonは、莫大な金額を投資して創り上げたロジスティクス網によって、規模の経済という‘Moat’を築いています。また、フランスの最高級アパレルメーカーであるHERMESは、製品が高品質であることはもちろんのこと、1837年から続く伝統と歴史、そしてなにより「ブランド力」という‘Moat’によって、高い利益が守られ続けています。

しかし大企業ならまだしも、私たち中小企業が頑張って築いた‘Moat’は、資金力のある企業の参入によってあっという間に壊されてしまいかねません。たとえば、高度経済成長期の日本では、安さや便利さ、商品の品質を売りにしていた街の商店街が、資金力を持った大型小売店の参入によって競争優位性を失い、次々と閉店しました。また、産業革命で馬車が車に代替されたように、テクノロジーの進歩によって築きあげてきた‘Moat’が突如として崩されるということもあります。近年では、AIをはじめとする技術革新により、変化のスピードは指数関数的に速くなっています。

このような変化の激しい時代に、中小企業が生き抜いていくためにはどのようにすればいいのでしょうか。ここで重要なのが「経営理念」だと私は考えています。経営理念およびミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、本書の言葉を借りれば「組織に埋め込まれたDNA」そのものです。このDNAが組織のすみずみにまで生きて浸透し、スイッチが入って活性化することで、組織の存在意義が生まれて個人の日々の行動が変わると考えています。組織心理学者のエドガー・ヘンリー・シャインは、組織文化のことを「組織のなかで共有された暗黙の仮定のパターン」と定義しており、これは言い換えるなら「○○という価値基準のもと、××のような行動を続けてきた」とまとめられるような行動のクセのことです。そしてこの日々の行動のクセ(組織文化)こそ、一朝一夕では真似できない唯一無二の競争優位性(Moat)を創りあげてくれるのではないでしょうか。

そのような意味でも、経営理念はただ「つくるだけ」では意味がありません。制定した理念を社員一人ひとりに“浸透”させ、一人ひとりの日々の行動のクセをかたちづくるようになって、初めて卓越した組織力を生み出します。本書『理念経営2.0』を何度も何度も読み返しながら、当社の経営理念である「相談したいときに 相談すべき専門家に 相談できる社会へ」を組織のDNAとして浸透させながら、高く越えられない「お堀」を築き上げていきたいと思います。

印象に残った言葉【本書から引用】

いままでは、儲け続けていれば企業としては生き残ることができていた。しかしいまでは、本当にその会社は〝社会や環境にとっていいこと〟をしているのかが問われている。(p.26)
しかし、言語化しないで暗黙知のままにとどめていると、文脈を共有している限られた人にしか広がっていかない。組織の規模が大きくなっていくなかで、自分たちの組織のエッセンスを言語化して共有することは不可欠なステップなのだ。(p.39)
つくり方の点でも意味合いの点でも、ミッションとパーパスはかなり似通っている。どちらも会社が社会でどんな役割を担うか、どんな価値をもたらすか、自分の会社の中心軸としてなにを置くかをひと言で言い切るものだ。(p.152)
つまり組織文化とは、「○○という価値基準のもと、××のような行動を続けてきた」とまとめられるような、行動のクセのことだと言える。(p.257)
大前提として、どんな企業理念であれ、組織への実装のいちばんの役割を負っているのは経営者自身だ。経営者自身が折に触れて企業理念を語ることは非常に重要だ。経営者がやらなければ、他のだれも率先してやってくれない。(p.309)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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