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価値獲得にイノベーションを!価値創造だけでは生き残れない時代

経営・マネジメント

収益多様化の戦略

既存事業を変えるマネタイズの新しいロジック

著者:川上 昌直
出版社:東洋経済新報社
発売日:2021年11月26日

著者について

川上昌直(かわかみ まさなお)。1974年大阪府生まれ。福島大学経済学部准教授などを経て、2012年兵庫県立大学経営学部教授、学部再編により現職。博士(経営学)。「現場で使えるビジネスモデル」を体系づけ、実際の企業で「臨床」までを行う実践派の経営学者。ビジネスの全体像を俯瞰する「ナインセルメソッド」は、規模や業種を問わずさまざまな企業で新規事業立案に用いられ、自身もアドバイザーとして関与している。専門はビジネスモデル、マネタイズ。

本の概要

今、日本企業は低利益で苦しんでいるところが多い。
世界的にみても、日本のROE(株主資本利益率)やROIC(投下資本利益率)は低い水準にあり、そのことは日本の経営学者から幾度となく指摘されてきた。

「安くていいものをつくる」

これが、顧客に指示されてきた日本企業のものづくりといえるが、それはもう持ちこたえられない状況まできている。

本書では経営学者の川上氏が、主に海外の成功している企業を分析し「新たな収益の生み出し方」を提唱している。

「価値創造さえ一生懸命やれば、利益は必ずついてくる」という神話は崩壊してしまった。
まず利益イノベーションに着手し、価値創造のイノベーションを経る。そうすることで、最終的にビジネスのあり方そのものを変えられるということを本書は示してくれている。

本書を読むことで、企業が存続するうえで必要不可欠な「利益」への理解が深まり、既存事業を変えるマネタイズの新たな知見を得られるだろう。

読んだ感想

パラドックス-世界で最もイノベーティブな国の「持続的低収益性」

そんな衝撃的な一文から始まる報告書が世に公表されてから、早くも10年の年月が経とうとしています。発表したのは、当時一橋大学教授であった伊藤邦雄氏。伊藤氏が座長を務めた経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書は、瞬く間に『伊藤レポート』の名で知られるようになり、日本経済界に大きな衝撃を与えました。

伊藤氏が「世界で最もイノベーティブな国」と評したのは、日本です。「自動化」と「ジャスト・イン・タイム」の独自の生産方式で自動車業界を席巻したトヨタ。音楽を”持ち歩く”という新たな時代の波を作ったソニー。日本には、他国には真似できない高度な技術を持った人材が多士済々の如くおり、斬新で膝を打つような画期的なアイデアで溢れています。高度経済成長期にはその力が花開き、バブル経済の絶頂だった1989年には株式時価総額の世界ランキング10位以内に日本から7社が占める時代もありました。しかし、「失われた30年」という言葉が代表するように、現在国際経済の表舞台で活躍している日本企業はほとんどありません。最もイノベーティブと見られてきた日本企業が、持続的な低収益性というパラドックスに陥っている。そのような危機感を持って、伊藤氏は最終報告書を公表したのです。

現在でも日本企業の収益性は低いままです。伊藤レポートでは、企業の収益性に関して次のように指摘されています。

『個々の企業の資本コストの水準は異なるが、グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである。もちろん、それはあくまでも「最低限」であり、8%を上回ったら、また上回っている企業は、より高い水準を目指すべきである。』

東京証券取引所が2022年7月に公表した資料によると、主要株価指数の構成企業のうちROE8%未満の企業の割合は、米国(S&P500)14%、欧州 (STOXX600)19%に対して、日本(TOPIX500)は40%です。これは本書で指摘されているように、顧客に価値を提案する「価値創造」と、価値創造で生み出された価値を企業が収穫する「価値獲得」のうち、日本企業が「価値獲得」に問題を抱えていることを示しています。これだけイノベーティブな国なのに利益が出ないのは、日本企業が「価値創造を一生懸命すれば利益が出る」という”誤解”をしているからではないでしょうか。

当たり前のことかもしれませんが「利益をしっかり出す企業体質」にするためには、「利益」から目を背けてはいけません。近江商人の「三方よし」は有名ですが、売り手の利益が出てなければその好循環を存続することはできません。本書を読み、価値創造だけではなく価値獲得の仕組み構築の重要性を再認識することができました。

印象に残った言葉【本書から引用】

彼ら(GAFA)が取り組んだイノベーションは価値創造だけではない。常に、価値獲得に注目し、利益イノベーションともいえる取組みをしてきた。(P.34)
企業は、価値創造と価値獲得の両方を達成する必要がある。言い方を換えれば、両方を達成すればよいのであって、順序は関係ないのだ。そうであるとすると、利益イノベーションを優先させても何ら問題はない。(P.38)
その結果、価値創造さえ一生懸命やれば、利益は必ずついてくるという無根拠な信念だけが残った。特に日本企業は、ものづくりやもの売りの成功体験から、価値創造に重点をおいてきた。(P.50)
業界においては常識的なことでも、別の業界においては、革新的な価値獲得になりうる。(P.148)
儲けたい。そこが出発点になっても構わない。しかし、本気で儲けを追求するなら、本気で利益イノベーションを起こそうとするなら、その過程で、収益源の多様化と利益化について徹底して考え、新たな価値獲得に最適な価値創造を考えていかなければならない。(P.312)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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