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大切なことは「自社らしさ」の先にある。豊田章男氏のスピーチから見る「ストーリー」の重要性

経営・マネジメント

ストーリーとしての競争戦略

優れた戦略の条件

著者:楠木 建
出版社:東洋経済新報社
発売日:2010年4月23日

著者について

楠木建(くすのき けん)。一橋ビジネススクール特任教授。1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

本の概要

戦略の真髄は思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある。
本書では「優れた戦略」をそのように定義している。

事業で大きな成功を収め、その成功を持続している企業には共通点がある。それは、戦略が流れと動きを持った「ストーリー」として組み立てられているということだ。戦略とは、必要に迫られて、難しい顔をしながら仕方なく作らされるものではなく、誰かに話したくてたまらなくなるような、面白い「お話」をつくるということなのだ。

本書では、この「ストーリー」という視点から、究極の競争戦略と競争優位、その背後にある思考のパターンの本質を、多くの企業の事例を挙げながら解明していく。戦略策定を行う、すべての経営者やビジネスパーソン必読の一冊である。

読んだ感想

“If all you're trying to do is essentially the same thing as your rivals, then it's unlikely that you'll be very successful”
(他人と同じ、もしくは他人のやっていることを少しよくしようという程度では、事業は成功しない)

この言葉は、アメリカの経営学者でCompetitive Strategy(競争戦略論)の提唱者でもあるマイケル・ポーターの言葉です。ポーターは「他者と違ったユニークな存在であること」が利益の源泉だとし、その「ユニークさ」とは企業のポジショニングだと提唱しました。これは、いわば「他社と違ったことをする」戦略であり、本書ではSP(Strategic Positioning)の戦略として説明されています。

そして、持続的な競争優位性を築くためにはSPだけではなくOC(Organizational Capabilitiy)も必要だと、本書の著者である楠木氏は語ります。つまり「他社と違ったことをする」だけではなく、「他社と違ったものを持つ」必要があるのです。他社が簡単には真似できない自社独自の強みを持つこと。そして、その最たるものが、組織に定着している「ルーティン」だと結論付けています。さまざまな日常業務の背景にある、その会社の「やり方」がOCの正体だ。その力強いメッセージが、本書を読み終えた私の心の中に残っています。

ふと、私はトヨタ2023年株主総会で豊田章男氏が語った言葉を思い出しました。自動車業界で世界シェア首位を走り続け、100年に1度と言われるEVシフトの大荒波に揉まれながらも、日本経済を押し上げ続けている自動車メーカー、トヨタ。社長を退任して第一線から離れる豊田章男氏は、声を震わせながら、しかし力強くメッセージを伝えました。

“この14年間、私の役割は、「しんがり役」だったと思います。
「しんがり」とは、昔の武士の時代に例えると、負け戦に臨むときに、みんなが退却できるように砦を守る役割です。

私にとっての敵は、「トヨタらしさ」を忘れてしまった企業風土であり、守ろうとしたものは、「モノづくりの現場」と「トヨタの未来」だったと思います。そして、「しんがり社長」の私が遺せたものがあるとすれば、それは、未来を担う「人」だと思います。「あなたは何屋さんですか?」そう聞かれたときに「クルマ屋です」と胸を張って言える「人」だと思います。

最初は「誰からも望まれない社長」でしたが、トヨタの長い歴史の中では、こうした役割の社長が必要だったのではないかと、今では思っております。”

言葉を失いました。それほどまでに、章男氏の言葉は私の胸を激しく打ったのでした。 2009年に社長に就任してからの14年間、章男氏は「トヨタらしさ」を取り戻す戦いに挑み、原価低減やTPS(トヨタ生産方式)を再び組織の中に再浸透させようともがいていました。だからこそ、『未来を担う「人」を遺せた』という章男氏の言葉は、私の心の中で強く強く響きました。章男氏が遺した「人」「企業風土」「やり方」は、いうまでもなく一朝一夕で模倣できるものではありません。あぁ、これが人に話したくなる“ストーリー”なのか。圧倒的なOrganizational Capabilitiyの片鱗を見ました。

他人と同じ、もしくは他人のやっていることを少しよくしようという程度では、事業は成功しない。冒頭に引用したポーターの言葉は、競争戦略論のポジショニング重要性を説く言葉として引用されています。しかし、私は敢えて違う意味でこの言葉を解釈したい。事業を成功させるために大切なことは「他社の模倣」の延長線上にはなく「自社らしさ」を追求した先にあると。そして「自社らしさ」には、優れたストーリーが必要不可欠であると。

印象に残った言葉【本書から引用】

戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見えてくる。全体の動きと流れが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」ということです。(まえがき)
どんなストーリーでも、エンディングは決まっています。それは「持続的な利益創出」というハッピーエンドです。(P.173)
競争相手が非合理だと考えるような要素をあえてストーリーの中に組み込む。これが、クリティカル・コアの文字どおりクリティカルなポイントになります。(P.315)
どんな秀逸なストーリーでも、それが本当に成功するかどうかは事前には判断できません。最後のところは、やってみるしかないのです。(P.463)
切実なものとは、結局のところ「世のため人のため」なのです。本当にそうなるかは別にして、少なくとも自分では「世のため人のため」と信じられることでなければ、一〇年、二〇年続く仕事としても持たないのではないでしょうか(P.498)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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