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社員を信頼することが、経営者自身の自己変革につながる

経営・マネジメント

経営者を育てるアドラーの教え

著者:岩井 俊憲
出版社:致知出版社
発売日:2020年2月28日

著者について

岩井俊憲(いわいとしのり)。1947年、栃木県に生まれる。早稲田大学卒業。1985年、有限会社 ヒューマン・ギルドを設立。代表取締役。中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。ヒューマン・ギルドでカウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行うほか、企業・自治体・教育委員会・学校から招かれ、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修、リーダーシップ研修や講演を行っている。

本の概要

自己変革をしない社長には社内の変革はできない。なぜなら、社員は社長の背中をいつも見ているからだ。社長は社内で最も監視を受ける立場にあるのだから、自らの襟を正さないと「言葉と行動が違うじゃないか」と言われてしまうのだ。

では、社長自らが自己変革するためにはどうすればいいのか。そこで役に立つのが、アドラー心理学の教えである。アドラー心理学は過去の原因は問わず、未来に向けて何ができるのかを模索するものだ。この未来志向の考え方が、経営者を勇気づけ、自身の経営に自信が持てるようになる。人間の可能性を信じることで「自分だけがひたすら頑張らなくても自分のチームの中に優れた人材がいる」ことに気づくようになる。この経営者の気づきが、社内全体を活気づけることにつながるのだ。

「人間知の心理学」と呼ばれるアドラー心理学は、空理空論とは無縁な、あくまで生身の人間を対象とした実践の学である。これからの時代に成長する企業となるために、いま何が求められているのか。令和時代の新しい経営のあり方を探り、強烈に変革を促す一書だ。

読んだ感想

『信用するのではなく、信頼するのだ。信頼とは裏付けも担保もなく相手を信じること。裏切られる可能性があっても相手を信じるのである』-アルフレッド・アドラー

歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は著書『サピエンス全史』のなかで、「人類至上主義を確固たるものにしたのは、虚構(フィクション)を信ずる能力」だと説きました。厖大な数の見知らぬ人どうしも、共通の神話という虚構を信じることによって首尾よく協力できる。共同主観的な秩序という「虚構」を信じることができるからこそ、ホモ・サピエンスは「国」「経済」「企業」を形成し、多人数で協力できたのだと説明しました。アドラーの説いた「信頼(Trust)」とは、すなわちハラリ氏のいう「虚構を信ずる能力」と本質的には同じなのではないかと私は考えます。

アドラーの定義によると、信頼の対義語は「懐疑」です。辞書的な意味でいうと、懐疑とは考えを決定するのに十分な根拠がないため、動揺している心的状態を指します。つまり、相手を信じるための「根拠/裏付け」を見つけ出し、信用しようとする行為も「懐疑」の姿勢に含まれると考えられます。そして「懐疑」からは、対人関係における「前向きな関係」は築けないとアドラーは指摘しています。つまり、経営者が社員に疑いの目を向けることで、社員も経営者を疑うようになり、深い関係が築けなくなるのです。ハラリ氏の視点を借りれば、企業という「虚構」に懐疑という「サイエンス」を持ち込んだことにより、虚構が崩壊して企業が成り立たなくなる、とも説明できるのではないでしょうか。

アドラーの視点からも、ハラリ氏の視点からも、生産性の高い企業・組織を創り出す秘訣、それは、経営者が社員の人間性を無条件に信じること。相手の行動の一つひとつを評価するのではなく、相手の人間性を無条件に信じるところから相互信頼が生まれるということです。信頼することを恐れていたら、結局は誰とも深い関係を築くことはできません。

もちろん、時には社員から裏切られることもあるでしょう。しかし、アドラーによれば裏切るかどうかは他者の課題であり、自身(経営者)の課題ではありません。経営者は「自分にできること」と「自分にはできないこと」を見極めることに徹するべきなのです。それさえできれば、裏切りが他者の課題であることも理解でき、他者信頼に踏み込むことも難しくなくなるはずです。ロバを水辺に連れていけても、水を飲ますことはできない。だからこそ私たちは、ロバを水辺に連れていくという「自身の課題」に集中するべきなのです。

本書には「自己変革をしない社長には社内の変革はできない」という厳しい言葉が出てきます。これは「自身の課題に集中できない社長は、他者を信頼できず、社員からも信頼されない」と言い換えることができるのではないかと私は考えます。社員の可能性を無条件で信じ、人間の可能性を信じ続けること。数字で判断できる部分を改善することも大切ですが、それだけに囚われていると組織は崩壊してしまいます。まずは、目の前にいる他者の可能性を無条件で信じること。シンプルですが、これがアドラー心理学から学べる「企業経営の土台」となるのではないでしょうか。

印象に残った言葉【本書から引用】

社員は社長の背中をいつも見ています。社長は社内で最も人の監視を受ける立場にあります。(P.9)
私は叱り方のポイントは二つあると考えています。 一つは「怒りを随伴させない」こと。ちょっと軌道が逸れているときに、「こちらの軌道に戻ったほうがいいんじゃないかな」と叱る。 二つめは「期待を示す」こと。「あなたにはこういう期待をしてたんだよ。でも、期待に応えきっていないよ」と叱る。(p.26)
決算は経営者の通信簿だよ。経営をしっかりしているという裏づけを持ったときに、あなたの話は迫力が出るんだ。赤字を出しているのに借りものの理論で話をするなよ(P.39)
私は、「期待にはハシゴをかけろ」と言っています。究極の目標と現状の間にハシゴをかけて、その目標を実現するために、当面クリアするべき目標はこれ、短期的な目標はこれ、中期的な目標はこれ、長期的な目標はこれ……というように、そのときどきでなすべきことを示すのです。そういうハシゴをかけることによって段階的に上がっていけるように導くわけです。(P.58)
共感とは自分自身の行動を俯瞰する目を持つことです。(P.76)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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