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「役に立つ」がコモディティ化した世界で「意味がある」をどう創るか

経営・マネジメント

世界観をつくる

「感性×知性」の仕事術

著者:水野学、山口周
出版社:朝日新聞出版
発売日:2020年3月19日

著者について

水野 学(みずの まなぶ) 。クリエイティブディレクター/クリエイティブコンサルタント。1972年、東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1998年、good design company を設立。ブランドや商品の企画、グラフィック、パッケージ、内装、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手がける。主な仕事に相鉄グループ全体のクリエイティブディレクション及び車両、駅舎、制服等、熊本県「くまモン」、三井不動産、JR東日本「JRE POINT」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、黒木本店、Oisix、NTTドコモ「iD」、「THE」ほか。2012-2016年度に慶應義塾大学SFCで特別招聘准教授を務める。The One Show 金賞、CLIO Awards 銀賞ほか国内外で受賞歴多数。著書に『センスは知識からはじまる』(朝日新聞出版)など。

山口 周(やまぐち しゅう)。1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラム Global Future Council メンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)など。

本の概要

現代は「正解を出せる人」よりも「問題を提起できる人」が希少化しつつある、という指摘がある。ここでいう「問題」とは、「ありたい姿と現在の姿のギャップ」のこと。裏を返せば、現代人は「ありたい姿を構想する力」を失ってきているとも言えるだろう。

この「ありたい姿」のことを、本書では「世界観」と定義している。そして本書ではクリエイティブディレクターの水野学氏と山口周氏が対談形式で「世界観」と言うキーワードをめぐる対話を繰り広げている。二人の思考が出会い、ひとつの新しい“解“が生まれ、イノベーションが起きる。

これからの世界では、「役に立つ」という価値ではなく「意味がある」という価値で戦っていく必要がある。新しい価値を生み出すためには、どう考え、どう働けばよいかを学べる一冊だ。

読んだ感想

『日本企業はずっと「役に立つという価値」で戦ってきたけれど、「役に立つという価値」は過剰になってしまい、「意味があるという価値」が希少になった。つまり、「意味がある」こそ価値がある時代に変わったのです。』-山口周

「くまモン」「相鉄」などを手がける、日本を代表するクリエイティブ・ディレクター水野学氏と、リベラルアーツに基づいた鋭い視点で資本主義を解剖する著作家 山口周氏。お二方の対談の中で、ひとつ大きなテーマになったのが「現代社会で求められる価値の転換」でした。

山口氏が指摘するように、高度経済成長期の日本企業が創出した価値は、主に「役に立つ」というものでした。戦後の混乱期から再出発を遂げた日本は、自動車や家電、インフラといった「ものづくり」の力で日本経済を支えました。この時代に人々が求めていた価値は、いうまでもなく「役に立つという価値」です。”豊かな生活をしたい”という強い思いが人々に購買行動を促し、日本は経済大国への仲間入りを果たしました。

しかし、現代はどうでしょうか。現代人は、半世紀前と比べられないほど豊かな暮らしを送っています。もちろん、世帯ごとに経済的な格差や課題は山積みかもしれませんが、人類が現代ほど生命の危機にさらされず、安全で快適な生活をできていた時代はありません。スーパーやコンビニに行けば、生活に必要なものは大体揃っています。Amazonなどのネットショッピングで、世界中の品物を取り寄せることだってできます。あらゆる高付加価値商品がコモディティ化した現代において、「役に立つ」という価値だけで戦っていくのはもはや不可能に近いです。いま、人々の購買行動を支えているのは、”豊かな生活をしたい”という思いではなく、”自分らしい生活をしたい”という思いなのではないかと感じます。

そこで山口氏が指摘したのが、「意味がある」こそ価値がある時代に変わったというものです。この事実を象徴的にあらわしているのが、「BOTANIST(ボタニスト)」や「YOLU(ヨル)」などのヘアケアブランドを立ち上げた株式会社I-ne(アイエヌイー)の成功ではないかと思います。いうまでもなく、シャンプーやトリートメントといったヘアケア商品は、コモディティ化した商品の典型例だと言われています。経済学的に言っても、ヘアケア商品をはじめとする日用品は価格弾力性が高く、値上げがほとんどできません。そのため、シャンプーの売上ランキングはP&Gや花王、ユニリーバなどの流通力と資金力のある大手が上位を独占している状態でした。

しかし、I-neは会社規模が小さく、資金力もない時期にBOTANISTブランドを立ち上げ、大ヒット商品となりました。さらに、シャンプー価格の相場が数百円の時期に、BOTANISTの定価は千数百円程度。顧客が、値段や機能性だけをみて購入していないことは明らかでした。

I-neが目指したのは「Social Beauty Innovators for Chain of Happiness(“美しく革新的な方法”で、“幸せの連鎖”があふれる社会の実現に、挑戦し続ける)」。さらにBOTANISTは「植物と共に生きること」をテーマに、ブランドを展開していきました。そして、その“世界観”に共感したユーザーが商品を購入し、口コミで話題になり、レッドオーシャンと思われたヘアケア市場で大ヒットを生み出したのでした。

「役に立つ」だけでは生き残れない世界でどう戦うのか。やはり、本書のテーマである”世界観”が重要なテーマになってくると考えます。本書を読み返しながら、水野氏と山口氏の考え方をもっと深く学んでみたいと思います。

印象に残った言葉【本書から引用】

なぜ当時のAppleは、文字テキストによるビジョンを嫌い、わざわざコストをかけてショートフィルムという表現形式を採用したのでしょうか。最大の理由が「文字にすると必ず過去の反映になってしまう」からです。(P.8)
よく「ファーストペンギンになれ」と言うけれど、ファーストってまさに相対的な概念で、セカンドが出たときに初めてファーストになるんですよね。(P.71)
キリンを描かせるとだいたい皆さん、身体を黄色で塗って、茶色の水玉を点々と描きます。でも実際の黄色は茶色の比率の方が高いし、模様の間はベージュ色なんですよね(笑)。頭の中の思い込みを外して目の前のものを「よく見る」ことが、センスアップへの第一歩だと思います。(P.128)
これまで多くのデザイナーは、デザインが魔術であることの恩恵を受けてきた。「これを操れるのは才能がある自分たちだけだ」ということにしておけば、自分たちが安泰なので。でもこれからは、みんながセンスや美意識を当たり前のスキルとして持たないと、やっていけないです。(P.172)
手に馴染むとか肌馴染みがいいとか、感覚的に心地いいかどうかは、これからの時代、デザインにおいてより重要度が高まるんじゃないでしょうか。映像もそうだし、スマホのアプリでも同じです。動き方にストレスを感じるUIだと次第に使わなくなってしまう。(P.175)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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