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会社をつぶさないための利益管理手法

経営・マネジメント

売上最小化、利益最大化の法則

利益率29%経営の秘密

著者:木下 勝寿
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2021年6月16日

著者について

木下勝寿(きのしたかつひさ)。株式会社北の達人コーポレーション代表取締役社長。1968年、神戸生まれ。株式会社リクルート勤務後、2000年に北海道特産品販売サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」を立ち上げる。2002年、株式会社北海道・シーオー・ジェイピーを設立(2009年に株式会社北の達人コーポレーションに商号変更)。2015年東証一部に上場。日本政府より紺綬褒章8回受章。社長在任期間中の株価上昇率ランキング第1位(日経ヴェリタス 2020年10月25日発行)。

本の概要

経営者の最大の使命は「会社をつぶさないこと」である。
そのためには、できるだけトラブルやリスクを軽減する経営に努めることが必要だ。

では不確実性の高い昨今のビジネス環境において、一体どのようにすればトラブルやリスクを軽減することができるのだろうか。それは「売上を最小化し、利益を最大化する」というシンプルな戦略によって実現できる。

多くの経営者は「利益を犠牲にしてでも売上を最大化し、シェアを伸ばしていく」という戦略をとってしまう。だがトラブルは売上に比例して多くなる以上、利益が同じなら売上が大きい方がリスクは高い。

また、利益が上げられなければ必要なキャッシュが確保できず、トラブルに襲われた際に経営が傾きやすい。だからこそ、何事にも動じない盤石な会社をつくるためには、多くの経営者がやってしまいがちな戦略の逆、つまり「売上最小化、利益最大化」の戦略を取る必要があるのだ。

本書では、営業利益率29%という業界平均を遥かに上回る収益率を誇る「株式会社北の達人コーポレーション」の社長である木下勝寿氏が、会社を永続的に存続させる利益管理手法について、図表を用いながらわかりやすく解説している。本書を読み、自社の売上と利益をマネジメントしていくことで、突然のトラブルで売上がゼロになっても潰れない盤石な会社を創ることができるだろう。

読んだ感想

「会社は、経済が失敗することを前提に経営しなければならない」

1991年のバブル崩壊、2008年のリーマンショック、そして2020年から現在に至る新型コロナウイルスの感染拡大まで、これまで経済は定期的に何度も大きな不況に襲われ、その度に多くの企業が倒産に追い込まれました。どれだけ売上が大きくても、どれだけ会社の規模が大きくても、会社のキャッシュが底を尽きれば会社は潰れます。だからこそ私たち経営者は経済が失敗することを前提にして不況時に備え、売上よりも利益をしっかりと上げてキャッシュを確保する経営をする必要があるのです。

さて、本書の中で特に印象深かったのは「無収入寿命」という概念です。無収入寿命とは売上ゼロになっても経営の現状維持ができる期間のことであり、いわば最悪の状況下で何ヶ月会社を存続できるかという指標です。当然のことながら、この無収入寿命が長ければ長いほど不況時の会社の耐性は強いということになります。そして利益が同じであれば、売上が大きいほどコストが大きく不況時の耐性は弱くなっていきますので、当然無収入寿命も短くなっていきます。

高度経済成長期に日本の小売市場を席巻したダイエーの失敗も、この無収入寿命という視点が欠けていたことに尽きると思います。ダイエー創業者である中内氏の「売上は全てを癒す」という言葉に代表されるように、ダイエーは売上至上主義に徹してシェアを拡大し続け、利益はほぼ無視している状態でした。もちろんシェアの拡大は、小売業では流通などの面で規模の経済が働きコスト競争力の向上にもつながるため、好況時や継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)において一定の合理性があります。そのため現在でも、多くの企業はシェアの拡大を重視し、短期的な利益を犠牲にしてでもシェア拡大のために低価格販売を行います。しかしその戦略では不況時に生き残ることはできません。泳ぎを止めたら酸素が足りずに死んでしまうマグロのように、売上至上主義の経営は不況時で売上が立たなくなった途端、キャッシュが枯渇して破綻してしまうのです。拡大戦略をとり続けたダイエーも売上が立つ前提で経営をしていたからこそ、バブル崩壊で経済全体が低迷したのち急速に力を失ってしまったのだと私は考えます。やはり永続的に企業を存続させるためには、経営者は経済の失敗を前提として利益やキャッシュフローを重視しながら経営し、無収入寿命を伸ばすことが大切だと感じました。

では、著者の経営する会社である「株式会社北の達人コーポレーション」のように、高い利益率を維持するためにはどうすればいいのでしょうか。特に創業初期の中小企業やベンチャー企業においては、先行投資が必要で利益が出ないことも多々あります。つまりそもそも売上をゼロからイチにするために、先行投資としての販促費が必要になってくるというわけです。もちろん、在庫や設備などの先行投資の必要がないスモールビジネスを除き、創業期においてはある程度の赤字は覚悟しなければいけないと思いますが、ここで「先行投資をしたから利益率が悪い(もしくは赤字)であるのは仕方がない」と著者は主張します。先行投資をしたならば、その投資がいつ、いくらになって回収できるのかを考えなければいけないのです。これは私も含め、多くの中小企業経営者がハッとしてしまうような主張ではないでしょうか。

売上を上げたいのであればやるべきことは簡単です。販促費を増やして宣伝や広告を積極的に行い、多くの人に自社の製品やサービスを認知させることができれば、自ずと売上は上がっていくでしょう。しかしそれで利益率が上がるとは限らず、むしろ悪化してしまうことさえあります。利益率を上げるためには、どんな業務にも潜む「隠れコスト」を炙り出し削減することで、会社を利益体質に変えることが必要なのです。

そして本書には、著者の木下さんが会社を利益体質にするために行った施策の全てが記されています。正直、ここまでのノウハウを公開してしまっても大丈夫なのかと心配になるくらい、具体的かつ網羅的な利益の管理術を惜しみなく公開しています。売上は立ってもなかなか利益に結びつかないとお悩みの経営者の方や、日々の業務でプロモーション活動を担当している社員の方に是非読んでいただきたい一冊です。

印象に残った言葉【本書から引用】

私の考えはシンプルだ。利益につながらない業務はやめる、もしくは変える。(p.4)
経営者の立場から言えば、会社のピンチを救うのは現金預金しかない。キャッシュがあれば、赤字になったときに備え、どんなトラブルやアクシデントにも対処できる。設備投資が必要なときにも現金で買える。(p.38)
大手が参入するには小さすぎる市場を切り拓き、中小にはマネできない高品質の商品を投入する。私の感覚では、大手企業は20億円以下の小さなマーケットには参入してこない。つまり、小さな市場で圧勝する戦略だ。(p.134)
基本は「びっくりするほどよいものができた」場合だけ販売する。ボツになると全部つくり直す。(p.144)
広告の目的は目立つことではない。利益を生み出すことだ。目立たないプロモーションが一番利益を生む。(p.203)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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