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情報の価値が下がる世界で大切なのは、審美眼と人格を磨くこと

自己啓発

影響力の武器

人を動かす七つの原理

著者:ロバート・B・チャルディーニ
出版社:誠信書房
発売日:2023年11月10日

著者について

ロバート・B・チャルディーニ。アリゾナ州立大学心理学部名誉教授。米国を代表する社会心理学者の一人であり、社会的影響過程、援助行動、社会的規範などに関する数多くの業績で学界をリードしてきた。ウィスコンシン大学、ノースカロライナ大学、コロンビア大学で心理学を学んだが、彼が特に興味を持っているのが社会的影響力の複雑な仕組みである。その理由は、彼が合衆国のなかではドイツ系の住民が多く住む田園地帯ミルウォーキーに生まれたこと、さらにそのなかでポーランド系が圧倒的多数を占める区画のなかに生まれ、さらにイタリア系一家の子どもとして育ったためなのだそう。

本の概要

人の動かし方には法則がある。
その法則はあなたの会社を守る「武器」になる。

本書の著者は、街頭や個別の訪問販売、怪しげな宗教の寄付で苦い思いを味わった経験から、セールスマンや広告主の世界に入り込み、人がどのような心理的メカニズムで動かされるのかを分析した。そして、人を動かすには「返報性」「コミットメントと一貫性」「社会的証明」「好意」「権威」「希少性」の6つの原理が大切になることを明らかにした。

自社商品のマーケティングや自社のブランディングに、これらの「武器」が役立つことはいうまでもないだろう。それだけではなく、あなたを騙したり丸め混んだりしようとしてくる悪意を持った人たちから、あなたの会社を守る理論的基盤を身につけることができるだろう。

読んだ感想

“The web is more a social creation than a technical one.” - Tim Berners-Lee
(『ウェブは技術的なものというより、社会的な創造物だ。』 - ティム・バーナーズ=リー)

果たして、インターネットは私たちの生活を豊かにしたのでしょうか。

遡ること33年、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)でWorld Wide Web(WWW)が産声をあげました。生みの親は、当時コンピュータ技術者としてCERNに在籍していたティム・バーナーズ=リー。世界で初めての、Webサイトの誕生です。

World Wide Webとは、日本語に訳せば「世界中に広がる蜘蛛の巣」の意。その名の通り、Webの発明によってインターネットは指数関数的に全世界に広がっていきました。総務省『令和5年版 情報通信白書』によると、日本のインターネット普及率は84.9%。今後も、インターネットの普及率は上昇が見込まれています。溺れてしまうほどの情報の大海原の中央で、私たちは生きている。今の時代にインターネットが不可欠だということは言を俟たないでしょう。

しかし、士業の先生方のWebサイトを制作している身として常々感じるのは「インターネットは私たちの生活を豊かにしたのだろうか」という疑問です。ティムが『ウェブは技術的なものというより、社会的な創造物だ。』という言葉をのこしたように、今やWebサイトは人々の経済社会に欠かせないものとなっています。たとえ、1991年にティムがWebを生み出していなかったとしても、人間社会は情報を繋ぎ全世界へ発信する手段を早かれ遅かれ創り出していたことでしょう。情報はいつの時代だって「自由になりたがっている」のですから。

インターネットの普及がもたらした「功」は数えきれません。私たちはメールやLINEを使って、他の人と非同期コミュニケーションをとることに成功しました。以前は図書館に出向き1日かけてようやく探していた情報に、私たちは指先ひとつでアクセスできるようになりました。誰もが、前よりも器用に生きられるようになりました。

では、インターネットの普及がもたらした「罪」はなんでしょうか。私は、そのひとつが「情報のデフレーションを加速させたこと」だと考えています。伝統的な経済学の知見によれば、市場にモノが供給されすぎると供給曲線が右にシフトし、相対的にモノの価値は下がります。同様の原理で、インターネットに「情報」が溢れかえれば、相対的に「情報」の価値は下がってしまいます。新聞が売れなくなったのも、書店が潰れていっているのも、インターネットの普及による情報のデフレーションが一因になっていることでしょう。

本書『影響力の武器』では、人を動かす要素のひとつとして「希少性」が挙げられています。ある情報へのアクセスが制限されると、人はそれを手に入れたくなります。ここでしか手に入らない情報、といわれると、人はそれをなんとしてでも手に入れたくなる。ほとんどの情報がすぐにアクセスできる場所にあるからこそ、制限された情報は相対的に価値が上がったように“見える”のです。

ここから得られる教訓は2つあります。1つ目は「情報を正しく見極める審美眼を磨くこと」の重要性です。世の中には「希少性」の法則を悪用して、誤った情報をあたかも「価値の高い情報」に見せ、利己的な目的に利用する人々が存在します。氾濫する情報の波に攫われないよう、私たちは情報を正しく見極める力を磨き続ける必要があります。

もう1つは「本当に価値ある情報を発信することが、これからますます求められるようになる」ということです。誤った情報や、価値のない情報が氾濫する時代だからこそ、価値のある情報はますます人々に求められるようになるでしょう。価値のある情報は、これまで学んできたこと、経験してきたこと、気づいたことなど、自分の人生経験のなかから生まれてくるものです。つまり価値ある情報を発信するためには、常に自分自身を磨き続ける必要があるのです。人格を磨き、努力を重ね、学び続けた人だからこそ、本当に価値のある情報を発信できるのだと私は考えています。

インターネットは私たちの生活を豊かにしたのでしょうか。それは、これから私たちがどのような情報を発信するのかに委ねられているのかもしれません。情報のデフレーションが進んでいくなかで、価値のある情報を発信できるように、私も今できることを精一杯やっていきたいと思います。

印象に残った言葉【本書から引用】

自動的行動パターンについては、絶対に押さえておくべきポイントが存在します。それは、このパターンの機能を熟知する者に対して、私たちは恐ろしいほど無防備になるということです。(P.39)
ひとたび決定を下したり、ある立場を取る(コミットする)と、自分の内からも外からも、そのコミットメントと一貫した行動をとるように圧力がかかります。そのような圧力によって、私たちは自分の決断を正当化しながら行動するようになります。そして自分が正しい選択をしたと自分に言い聞かせるだけで、本当に、自分の決定に対する満足度が上がるのです。(P.123)
どんな考えでも、それを正しいと思う人が多ければ多いほど、人はその考えを正しいと見ることになる。社会的証明の原理はそう言っています。(P.238)
悪い出来事やよい出来事と、ただ関連があるだけで、私たちは人びとによくも悪くも思われてしまうのです。(P.341)
情報の希少性さえ高ければ、私たちはそれが検閲を受けたものでなくても価値を置くようになることがわかります。希少性の原理が教えるところでは、私たちは、それがほかでは手に入らない情報だと思うだけで、その情報により説得力があると考えるようになるのです。(P.443)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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