まほろば文庫
LIBRARY

士業専門のホームページ制作会社
株式会社まほろばの書評ブログ

LIBRARY

失敗しても、粘り強く努力を続けることには価値がある

自己啓発

やり抜く力 GRIT(グリット)

人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

著者:アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth, Ph.D.)
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2016年9月9日

著者について

アンジェラ・ダックワース(Angela Duckworth, Ph.D.)。ペンシルベニア大学心理学部教授。近年、アメリカの教育界で重要視されている「グリット」(やり抜く力)研究の第一人者。2013年、マッカーサー賞(別名「天才賞」)受賞。教育界、ビジネス界、スポーツ界のみならず、ホワイトハウス、世界銀行、経済協力開発機構(OECD)、米国陸軍士官学校など、幅広い分野のリーダーたちから「やり抜く力」を伸ばすためのアドバイスを求められ、助言や講演を行っている。

本の概要

天賦の才というべきか。ずば抜けた偉業を成し遂げるためには、多くの人は「生まれつきの才能」が必要だと思っている。世界を舞台に熾烈な争いを繰り広げるアスリートや、イノベーティブな製品を生み出す起業家。彼・彼女らの型破りな身体能力や発想力を見せつけられたとき、私たちは思わず「天才」という言葉を使ってしまう。しかし、それは本当に”正しい”ことなのだろうか。

たしかに、成功要因のひとつに天賦の才があることは事実だ。しかし、天賦の才はあくまで成功要因の一側面を捉えただけにすぎないのではないだろうか。彼・彼女らの凄まじいアウトプットは、一朝一夕に生み出されたわけではない。失敗を何度も繰り返し、逆境を何度も乗り越え、才を築いた。その「やり抜く力(GRIT)」にこそ、真の成功要因があるのではないだろうか。才能よりも重要なのは「やり抜く力」ではないのだろうか。

この「やり抜く力」の正体を科学的に解き明かそうとしたのが本書だ。本書は、著者のアンジェラ氏が数々の実験と観察により「やり抜く力」とは何かを測定し、それらが「成功」に及ぼす影響を詳細に解き明かしている。本書を読めば、自身の「やり抜く力」を育み、目標を粘り強く達成する力がつくだろう。

読んだ感想

『いつかは誰かがやらねばならないことがある。だからうちがやる。努力しなければ会社はやがて傾く。』-佐治敬三

"やってみなはれ"の精神のもと、日本の飲料・酒類業界を牽引するサントリー。特に"サントリーグループの魂"とも表現されるサントリーのビール事業は「ザ・プレミアム・モルツ」や「サントリー生ビール」をはじめ、数々のヒット商品を生み出し続けています。しかし、実はサントリーのビール事業は「参入から45年間赤字」だったことはあまり知られていません。サントリー二代目社長の佐治敬三氏が生涯をかけて礎を築いたビール事業には、佐治氏の情熱と粘り強さ、そして"GRITの精神"が刻みこまれていると感じます。

1961年、創業者の鳥井信治郎氏に継ぎ、次男の佐治敬三氏がサントリー(旧・寿屋)の社長に就任しました。社長就任後、佐治氏が手掛けたのはビール事業への再参入。ビール事業は過去に信治郎氏が手掛けたものの、競合他社からリターナブル瓶の共用を拒まれて撤退を経験していました。父である信治郎氏の想いを受け継ぎ、佐治氏は最難関であるビール事業に挑戦する決意を固めました。この際、信治郎氏が佐治氏にかけた言葉こそ「やってみなはれ」だと言われています。

ビール事業への挑戦は、まさに逆境の連続でした。当時、サントリーはビールの販路すら持っていないうえ、キリンビール、アサヒビール、サッポロビールの3ブランドでビール市場は寡占状態。新規参入したサントリーは3社の寡占を崩せず、赤字に苦しむことになりました。しかし、佐治氏は決して諦めなかった。ビール事業こそ、サントリーの「魂」になる。いつか誰かがやらなければならない。「だからうちがやる」と、何度も逆境を乗り越えながらビール事業を伸ばそうと邁進しました。

しかし佐治氏が存命のうちに、その願いが叶うことはありませんでした。1999年、佐治氏は80年の生涯を終え、サントリーの経営は三代目社長・鳥井信一郎氏(1990年-2001年)、四代目社長・佐治信忠氏(2001年-2014年)へと引き継がれていきました。最終的には、ビール事業参入から46年目の2008年、「ザ・プレミアム・モルツ」や第三のビール「金麦」のヒットで、サントリーのビール事業は初の黒字を達成します。佐治氏は存命中に黒字化の悲願達成の瞬間を見ることはできませんでしたが、佐治氏が生涯をかけて築いた礎が、ビール事業を成功へ導いたことは間違いありません。

たしかに、佐治氏の判断は必ずしも「合理的」ではなかったかもしれません。経済的な利益だけを追求するのであれば、ビール事業には参入せず、既存の事業に集中したほうが利益は上がる可能性もあったでしょう。ファイナンスの視点からも、ビール事業参入時の割引現在価値の総和を算出すると、価値がマイナスになって企業価値を毀損しているという批判も当然ながらあると思います。もしサントリーが上場していたら、佐治氏の経営方針は厳しく追及されていたのかもしれません。

しかし佐治氏がビール事業をやり抜かなかったら、途中でやめていたら、今のサントリーの企業文化は存在していなかったと思います。人々に愛され続ける商品も、今ほど開発できていなかったかもしれません。何かをやり抜くことは、必ずしも合理的な選択とはいえない場合もあります。しかし、合理性さえも超えて、情熱を持って粘り強く努力を続ける。それができた者にしかやり遂げられないことが、きっとあります。

『そして、これがいちばん重要なこと。やり抜く力は、自分にとってかけがえのないことに取り組んでこそ発揮されるの。だからこそ、ひたむきに頑張れるのよ』

本書の中で印象に残った言葉のひとつです。たとえ誰かに批判されても、合理的な選択でなかったとしても、自分にとってかけがえのないことは決して諦めずにやり抜く。自分の本当に好きなことに打ち込み、愛し続けた先にこそ、誰も成し遂げられなかったことを達成できるのだと思います。

印象に残った言葉【本書から引用】

失敗しても挫けずに努力を続けるのは──どう考えてもたやすいことではないが──きわめて重要らしかった。(P.29)
要するに、目標のピラミッドが全体としてひとつにまとまり、各目標が関連性をもって、整然と並んでいる状態が望ましいのだ。(P.108)
しかしどの場合も、伝えようとしているメッセージは同じだ。昼夜を問わず苦労を重ね、挫折や失望や苦しみを味わい、犠牲を払っても──それだけの価値はある。なぜなら最終的に、その努力はほかの人びとの役に立つからだ。つまり「目的」という言葉の中心的な概念は、「自分たちのすることは、ほかの人びとにとって重要な意味を持つ」ということになる。(P.224)
新しいことでも、いまやっていること(ピアノやヴィオラ)でもかまわないが、最低でもひとつのことを2年間は続けなければならない。(P.350)
私がおおいに興味を持っているのは、「文化には長期的に私たちのアイデンティティを形成する力がある」という考え方だ。長期的に条件がそろえば、自分が所属する集団の規範や価値観は、やがて自分自身の規範や価値観になる。自分の一部となり、つねについてまわる。集団の流儀や信念だったものが、自分自身の流儀や信念になるのだ。(P.357)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

こちらの記事もどうぞ

Mahoroba Pro[まほろばプロ]
士業検索ポータルサイト

士業検索ポータルサイト[まほろばプロ]
掲載無料/相互リンク不要
士業の事務所情報を資格・都道府県・相談分野・キーワードで絞込み検索。気になる事務所のホームページへアクセス。
まほろばプロ

Mahoroba Design[まほろばデザイン]
士業専門のホームページ制作

士業専門のホームページ制作[まほろばデザイン]
高品質テンプレートをカスタマイズ。『ホームページにコストをかけたくない、でも無いと困る、できれば素敵なデザインで』を叶えます。
制作費 49,800 税込54,780
維持管理費 月額3,980 税込4,378
まほろばデザイン