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毒にも薬にもなる「雑談」を、ビジネスで”武器”として使うために大切な考え方

自己啓発

世界の一流は「雑談」で何を話しているのか

著者:ピョートル・フェリクス・グジバチ
出版社:クロスメディア・パブリッシング
発売日:2023年3月31日

著者について

ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、株式会社GA Technologies社外取締役。 モルガン・スタンレーを経て、Googleで人材開発・組織改革・リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『NEW ELITE』他、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』『世界最高のコーチ』など執筆。ポーランド出身。

本の概要

「今日は本当に暑いですね」

日本では、取引先との商談などを始める際に、本題に入る前のイントロダクションとして雑談を交わすのが一般的である。日本のビジネスマンは雑談を本題に入る前の「潤滑油」と考え、その場を和ませたり、無駄な緊張感を取り除いて、相手との距離感を縮めることを期待しているのだ。

しかし、著者のピョートル氏は、この"日本独特の習慣"を「それだけではもったいない」と語る。なぜならば、商談の場は「ビジネスの場」だからだ。ビジネスの場で、お互いに利害関係がある以上、最も大切なのはその雑談を通して成果を出すことだ。

本書では、Googleで人材開発に従事していた著者が、Google流の「一流のビジネスマンが交わしている雑談」について解説している。本書を通じて世界で活躍する一流のビジネスマンの雑談との向き合い方や、日本との考え方の違いを知ることで、「雑談」を武器としてフル活用し、仕事のパフォーマンスを上げ、成果を出すことができるようになるだろう。

読んだ感想

“The most important thing in communication is hearing what isn't said.”
(コミュニケーションで最も大切なことは、相手の言わないことに気づくことである)

これは「マネジメントの発明者」として知られる経営学者ピーター・ドラッカー氏の言葉です。ドラッカー氏は、問題解決において大切なことはコミュニケーションだと考えました。ここでいう「コミュニケーション」とは、相手が直接的には言わない「本音」に迫るコミュニケーションのことです。日本人が雑談と呼ぶ、うわべだけの世間話では決してありません。どこにどのような問題があるのかという「本音」を探り、それを明らかにし、解決する。その問題解決までの一連の流れを、コミュニケーションにおける最も大切なことだと考えていました。

これらの「本音」は、「ラポール」が形成されていなければ決して相手から開示されることはありません。本書でも語られているように、お互いに「信頼」できる関係を築き、お互いが「信用」できることを確認し、お互いを「尊敬」できる関係を作れて、初めてラポールは形成されます。天気や思いつきの世間話でラポールを作るのは、不可能に近い。だからこそ、私たちは"戦略的"に雑談を構成し、「武器」として雑談を活用していく必要があるのだと感じました。

私は、多くの日本人がビジネスの場で交わしている「ラポールを形成しない目的のない雑談」は、コミュニケーションの潤滑油になるどころか、むしろ「毒」になることさえあると考えています。それを最もよく表しているのが、米EC最大手のAmazonです。

Amazonのコミュニケーションに対する向き合い方を顕著に表す事例として、次のようなエピソードがあります。Amazonの社内研修の場で数人のマネジャーが、社員間でのコミュニケーションがあまり取られていないことを危惧して、従業員はもっと相互にコミュニケーションを取るべきだと提案しました。しかし、それを聞いたAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏は立ち上がって「コミュニケーションは最悪だ」と力説したといいます。ベゾス氏は「コミュニケーションを必要とする組織は、きちんと機能していないという証拠でしかない」と考えたのでした。

ベゾス氏は「コミュニケーションを必要とせずとも機能する、徹底的に仕組みに落とし込まれた組織」を目指しました。そのためAmazonの社内会議では雑談はおろか、効率を重視して徹底的なムダの削減が行われていると言われています。たとえば、会議資料は人によって解釈が異ならないようにパワーポイントは使用禁止。文章、数字、グラフを組み合わせた紙の資料を用意し、会議の冒頭に参加者全員で「黙読」するといいます。Amazonの徹底的に労働効率を重視した社風は、近年日本でも度々話題になっており、注目を集めています。

一見、Amazonが理想とする「コミュニケーションを必要とせずとも機能する徹底的に仕組み化された組織」と、Google流の「密なコミュニケーションをとるフラットで風通しの良い組織」は、真っ向から矛盾するようにも感じます。しかし、両者は「問題解決を第一に考えている」という点で共通していると私は考えます。当然ながら、多くの日本企業で習慣的に行われている「目的のない雑談が会議の最初に始まる社風」とは全く異なります。やはり一流の企業は、雑談でも、仕組み化でも、「チームの生産性を向上させて、成果を出すこと」を重要視しているのではないでしょうか。

本書から学べる通り、コミュニケーションや雑談は匙加減で毒にも薬にもなります。自分が普段交わしている「コミュニケーション」がどのように生産性を高め、どんな問題を解決しているのか。そして、目の前にいる相手とのラポールを形成できているか。私自身の「雑談の目的」を改めて考えるきっかけとなりました。

印象に残った言葉【本書から引用】

友人や知り合いとのプライベートな雑談であれば、無駄話や世間話でも十分に楽しい雰囲気になりますが、ビジネスの場では、それを期待することは難しいと思います。なぜならば、お互いに利害関係があり、双方が成果を求めて対面しているからです。(P.29)
日本のビジネスマンでも、仕事ができる人は事前に情報を集めて、鋭い質問を投げかけてきます。「この本にはこう書かれていたのですが、私はまったく違う見方をしています」こんな話が飛び出せば、僕としては、思わず身を乗り出して真剣に話に耳を傾けます。(P.43)
困っているならば、「悪いけど、助けてほしい。今度、メシをごちそうするから」と素直に頼めばいいと思います。間違っても、「これを明日の朝までにやっておいてくれ」と言い残して、自分だけさっさと帰宅するような行為は慎むべきです。そんなことで、上司の「威厳」が保てることは、100%ないのです。(P.103)
エグゼクティブに限らず、チームのマネジャーであれば、時間がなく、せっかちですから、「結論ファースト」の会話を好みます。(P.118)
ビジネスの雑談の目的は、「チームの生産性を向上させて、成果を出すことにある」(P.180)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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