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「フェルミ推定」は全てのビジネスパーソンの「武器」になる

集客・マーケティング

ロジカルシンキングを超える戦略思考

フェルミ推定の技術

著者:高松 智史
出版社:ソシム
発売日:2021年8月18日

著者について

高松智史(たかまつさとし)。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供するKANATA設立。本講座は法人でも人気を博しており、これまでアクセンチュア、ミスミ等での研修実績がある。BCGでは、主に「中期経営計画」「新規事業立案」「組織・文化変革」などのコンサルティング業務に従事。YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。

本の概要

フェルミ推定とは「未知の数字を常識・知識を基にロジックで計算すること」だ。

例えば「これから参入する事業の市場規模を知りたい」や「競合他社の利益率を推定したい」といった、調べてもわからない未知の数字を目の前にしたとき、フェルミ推定という思考のフレームワークはあなたのビジネスを加速させる「武器」となるだろう。

一方でどんなに知識があったとしても、「フェルミ推定」という武器がなければ未知の数字を解き明かすことはできない。グローバルで事業を展開する一流のコンサルティングファームの入社試験にフェルミ推定が用いられるのは、そもそもフェルミ推定という武器なくしては厳しいビジネスの戦場で戦うことすらできないからではないだろうか。

本書は「そもそもフェルミ推定とは何なのか」というフェルミ推定の基礎から、実際のケーススタディを盛り込んだ応用まで、1冊でわかりやすく解説されている。これからフェルミ推定を学びたいと思っている方の最初の一冊として、ぜひ本書を手に取っていただきたい。

読んだ感想

“There are two possible outcomes: if the result confirms the hypothesis, then you've made a measurement. If the result is contrary to the hypothesis, then you've made a discovery.”
(結果には2つの可能性がある。もし結果が仮説を裏付けたなら、あなたは何かを計測したことになる。もし結果が仮説の反対であったなら、あなたは何かを発見したことになる。)

この言葉は、フェルミ推定の生みの親であるアメリカの物理学者エンリコ・フェルミが遺したものです。フェルミは「原子力の父」として統計力学、量子力学及び原子核物理学の分野で非常に優れた業績を残しており、1938年にはノーベル物理学賞を受賞しています。そんな彼は「だいたいの値」を見積もる達人でもあり、初期の原爆実験の最中に衝撃波が通り過ぎる際、小さな紙切れを数枚落として爆風に舞う紙切れの軌道から爆風の強さを概算で弾き出したこともあったとも言われています。

フェルミの言葉は「仮説を立てることで、はじめて結果は意味をなす」という極めて重要な示唆を与えてくれます。深い仮説がないまま何か施策を打ち結果が出たとしても、そこから得られる学びは非常に少ないです。たとえ施策で良い結果が出たとしても、仮説を立ててなければ「なぜ良い結果が出たのか」という要因分析ができません。深い仮説があるからこそ仮説と結果との差分を検証でき、そこから良い結果(もしくは悪い結果)が出た要因を学ぶことができるのです。

そもそも仮説のない状態で結果を出そうとする行為は、それ自体が誤った結論を導いてしまいかねないという危険性を孕んでいます。例えば2001年にベストセラーになった『ビジョナリーカンパニー2』の中で著者のジェームス・コリンズは、過去40年にわたってパフォーマンスが株式市場全体を上回った11社と、そうではない11社とを比較し、成功した企業に共通する顕著な特徴を5つ見つけ出しました。しかしながら、今日では「成功した企業」とされた会社はすでに株式市場全体のパフォーマンスを平均的に下回っており、コリンズが出した結論は誤っていたことが明らかになっています。

コリンズが誤った結論を導いてしまった一因としては、コリンズが検証すべき仮説を持たずにプロジェクトを開始してしまったことに由来します。もしコリンズが深い仮説を立て、結果との差分を検証していれば、もしかしたら誤った結論は出なかったのかもしれません。少なくとも結果が仮説を裏付けたなら、あなたは何かを計測したことになりますし、仮説の反対であったなら、あなたは何かを発見したことになるため、何らかの学びはあったはずです。今となっては、コリンズの試みは仮説なく開始してしまったばかりに、結論が間違っていたとしても、その後の検証の余地もなくなってしまいました。これと同じような事象は、研究の分野だけでなくビジネスの現場でも頻繁に起こっています。

では、学びを最大化するような深い仮説を立てるためには、一体どうすればいいのでしょうか。ここで重要になってくるのが、本書の主題でもある「フェルミ推定」の考え方です。フェルミ推定では、目の前にある「答えのない未知の数字」に対し、常識や知識をもとに、要因を因数分解しながらロジックを組み立て「おおよその数字」を見積ります。そしてこの「因数分解」が優れているほど、得られる学びが大きい「深い仮説」を立てることができます。

仮説を立てることは、全てのビジネスを加速させるための「出発点」となります。そして深い仮説を立てるためには、本書で説明されているような「フェルミ推定」という武器が必要不可欠です。是非、本書でフェルミ推定についての理解を深め、あなた自身のビジネスを成功させるための強力な道具として活用してください。

印象に残った言葉【本書から引用】

フェルミ推定=未知の数字を常識・知識を基にロジックで計算すること(p.18)
因数分解は「気持ち悪い」ドリブン。皆さんの覚えた違和感が大事であり、ただただ因数分解を“細かく”するという感じで、算数的にやってはいけないのです。(p.114)
思考が人よりも深く、思考が複雑になるから、全てを表現しようとする。故に、思考に話す技術がついてきていないだけ。(p.197)
フェルミ推定は、伝わらないと意味がない。フェルミ推定は、議論できないと価値はない。(p.229)
フェルミ推定とは「現実の投影」であり「ビジネスモデルの反映」ですから、実際に事業を行なっている人と議論するのが最高なのです。(p.262)

AUTHOR天野 勝規

株式会社まほろば 代表取締役

士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級

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