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中小企業経営・マーケティングの基礎知識 |
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2026.06.26|経営・マーケティング
「広告を出しても、思うように問い合わせが増えない」。そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。一方で、大きな広告費をかけることなく、お客様からの紹介が次の紹介を生み、着実に新規顧客を増やしている会社もあります。
この違いは、運や人脈の広さだけで生まれるものではありません。近年の調査では、企業の新規取引において「紹介」が果たす役割はますます大きくなっており、紹介される会社には共通する特徴があることもわかってきました。
本記事では、紹介によって選ばれ続ける会社が、日頃からどのような姿勢や取り組みを大切にしているのかを考えていきます。
目次
では、実際にBtoB企業ではどのような営業手法が成果につながっているのでしょうか。
株式会社ラクスとSansan株式会社が2025年10月に実施した「中小企業の新規開拓に関する実態調査」によると、従業員300名以下のBtoB企業が実施している新規開拓手法では、「既存顧客や知人からの紹介」が60.7%で最多となりました。2位の「飛び込み営業や代表電話への架電」は30.7%であり、紹介はその約2倍という結果です。
さらに、「実際に商談につながっている手法」でも、「紹介」は52.0%と半数を超え、その他の手法はいずれも12%以下にとどまりました。つまり、紹介は数ある営業手法の一つではなく、新規開拓において最も成果を生み出している手法だといえます。
では、なぜ紹介はこれほど効果的なのでしょうか。
BtoBの取引は、導入までの検討期間が長く、一度取引が始まると簡単には取引先を変更しない傾向があります。そのため、発注する企業は価格や機能だけでなく、「この会社なら安心して任せられるか」を重視します。
そのような場面では、広告や検索で初めて知った会社よりも、信頼している取引先や知人から「あの会社はおすすめですよ」と紹介された会社のほうが、心理的な安心感があります。紹介者への信頼が、そのまま紹介先への信頼にもつながるためです。
また、紹介による商談では、相手は一定の信頼を持った状態で話を聞いてくれます。本来であれば必要となる「会社を知ってもらう」「警戒心を解く」「信頼関係を築く」といった初期段階を大きく短縮できるため、商談はスムーズに進みやすくなります。
その結果、成約率が高まりやすいだけでなく、契約後も良好な関係が長く続く傾向があります。大きな広告予算を確保しにくい中小企業にとって、紹介は最も費用対効果の高い営業手法の一つといえるでしょう。
しかし、同じ調査からは、もう一つ興味深い事実も見えてきます。多くの企業が紹介を重要な新規開拓手法と位置付けている一方で、それを戦略的に活用できている会社は決して多くありません。
紹介を主力としている企業のうち、新規開拓の成果を測る明確な指標(KPI)を設定していない会社は59.0%にのぼりました。また、新規開拓を「ほぼ手動で行っている」会社は61.5%、すぐに商談へ進まなかった見込み客に対して「特にフォローをしていない」と回答した会社も40.7%ありました。
つまり、多くの会社では、紹介は「誰かが勧めてくれれば問い合わせが来るもの」と捉えられ、仕組みとして管理・育成されていないのが実情です。
もちろん、それでも紹介が生まれることはあります。しかし、その状態では紹介件数を予測することも増やすことも難しく、紹介してくれていた人の異動や退職、あるいは景気の変化などをきっかけに、新規開拓が急激に減少してしまうリスクがあります。
一方で、紹介によって継続的に成果を上げている会社は、この状況から一歩抜け出しています。紹介は偶然生まれるものではなく、信頼関係や日々の取り組みの積み重ねによって生まれるものだと理解し、それを再現できる仕組みづくりに取り組んでいるのです。
紹介で着実に成長している会社を見ていると、特別な営業テクニックを駆使しているわけではありません。むしろ、当たり前と思われがちなことを、一つひとつ丁寧に積み重ねています。
人が会社やサービスを紹介するのは、「安心して勧められる」と感じたときです。その信頼は、一度の大きな感動ではなく、小さな期待以上の積み重ねから生まれます。
例えば、約束した納期より少し早く納品する、依頼された内容だけでなく気になる点も先回りして伝えるなど、ほんの少し期待を上回る対応が、「あの会社は良かった」という評価につながります。その積み重ねが、やがて自然な紹介を生み出していくのです。
契約はゴールではなく、お客様との関係の始まりです。導入後も「その後いかがですか」と声をかけ、困りごとがあれば改善策を提案する。こうした継続的なフォローは、お客様に「売って終わりではない会社」という安心感を与えます。
成果が出るまで伴走する姿勢は満足度を高めるだけでなく、「この会社なら安心して紹介できる」という信頼にもつながります。
紹介を受けたら、お客様だけでなく紹介者への対応も大切です。まずは紹介していただいたことへの感謝を伝え、可能であれば、その後の経過や結果も報告します。
紹介した人にとっても、「紹介して良かった」と感じられる経験になれば、次の機会にも自然と名前を挙げてもらえる可能性が高まります。紹介は一度きりではなく、感謝と信頼の積み重ねによって続いていくものです。
この3つに共通しているのは、目の前の相手との信頼関係を大切にする姿勢です。
裏を返せば、紹介が思うように生まれないときは、この循環のどこかに改善の余地があるのかもしれません。期待を上回る価値を提供できているか。契約後も成果に寄り添えているか。紹介してくれた人への感謝をきちんと伝えられているか。
紹介の数は営業力だけで決まるものではありません。日々の仕事の質や信頼関係の積み重ねが、紹介という形になって表れているのです。
では、紹介を増やすために、明日から何を始めればよいのでしょうか。
大切なのは、紹介を「偶然起こるもの」ではなく、「育てていくもの」と捉え直すことです。特別な仕組みや高価なシステムは必要ありません。まずは、紹介の流れを見える化することから始めてみましょう。
まずは、これまで紹介で獲得したお客様を振り返ってみてください。誰が、どのようなきっかけで紹介してくれたのかを書き出してみると、紹介は特定のお客様や取引先から繰り返し生まれていることに気づくはずです。
その「紹介してくださる方々」は、会社にとって非常に重要な存在です。普段から近況報告や情報提供を行い、関係性を丁寧に育てていくことが、次の紹介につながります。
また、新規のお客様のうち、何件が紹介経由だったのかを記録することもおすすめです。紹介を感覚ではなく数字で把握することで、改善すべき点が見えやすくなります。
先ほど紹介した調査では、約4割の企業が、すぐに商談へ進まなかった見込み客に対して、その後のフォローを行っていませんでした。
しかし、検討中だった企業から半年後、一年後に改めて相談を受けることは決して珍しくありません。定期的に情報提供を行ったり、近況をうかがったりするだけでも、思い出してもらえる可能性は高まります。
すぐに成果につながらない相手との関係を維持することも、将来の紹介や受注につながる大切な活動です。
最後に、一つ意識しておきたいことがあります。それは、紹介を無理にお願いしないことです。
「どなたか紹介してください」と依頼すれば、一時的に紹介が増えることはあるかもしれません。しかし、相手に負担を感じさせれば、これまで築いてきた信頼を損なう可能性もあります。
紹介は、依頼されて生まれるものではなく、「この会社なら安心して勧められる」と感じた人が、自発的に行うものです。だからこそ、紹介を増やそうとするのではなく、「紹介したくなる会社」であり続けることが何よりも重要なのです。
紹介は、偶然生まれるものではありません。
目の前のお客様に誠実に向き合い、期待を少し上回る価値を提供する。契約後も成果に寄り添い、紹介してくださった方への感謝を忘れない。その一つひとつの積み重ねが信頼となり、新たな紹介を生み出していきます。
広告や営業活動は、新しい出会いをつくるために欠かせない手段です。しかし、一度築いた信頼が次の出会いを連れてきてくれる仕組みができれば、営業は「追いかけるもの」から「広がっていくもの」へと変わります。
紹介は特別な会社だけが得られるものではありません。日々の仕事の質と、お客様との信頼関係が積み重なった結果として生まれるものです。
だからこそ、長く選ばれ続ける会社ほど、「紹介を増やそう」と考えるのではなく、「紹介したくなる会社であり続けること」を何よりも大切にしているのです。

AUTHOR天野 勝規
株式会社まほろば 代表取締役
士業専門のホームページ制作会社「株式会社まほろば」の代表取締役。大阪教育大学 教育学部 卒業。総合小売業(東証プライム上場)、公益法人での勤務を経て29歳で起業。
独立開業時の集客・顧客開拓に関する相談から、年商数億円規模の事務所のマーケティング顧問まで幅広い対応実績。15年間で3,000事務所以上からご相談・お問合せ。
ホームページを活用しつつも、SEO対策だけに頼らない集客・顧客開拓の仕組みづくりを推奨している。
【保有資格】
社会保険労務士、年金アドバイザー2級
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